いわゆる株主相互金融を営む会社において、融資を希望しない株主に対し「株主優待金」の支払をしても、法人税法上は、その支出を会社の損金に算入することは許されない。
いわゆる株主相互金融における「株主優待金」と損金算入の許否
旧法人税法(昭和22年法律第28号)9条1項
判旨
法人税法上の損金は純資産を減少させる損失を指すが、法律上禁止される支出や、実質的に株主の地位に基づいてなされる金銭的給付(配当)は損金に含まれない。
問題の所在(論点)
株式会社が株主に対し、利益の有無に関係なく一定の利率で支払うことを約した「株主優待金」が、法人税法上の「損金」(同法9条1項、現行22条3項)に該当するか。
規範
法人税法上の「損金」とは、一般に法人の純資産の減少をきたすべき損失を指すが、「資本の払戻し」や「利益の処分」は含まれない。また、経済的・実質的に事業経費の性質を有する場合であっても、その支出自体が法律上禁止されている場合や、株主に対しその地位に基づいてなされる金銭的給付(配当)である場合には、法人所得の計算上、損金に算入することは許されない。
重要事実
上告会社は、貸金業法の規制を回避するため「株主相互金融」と称する方式を考案した。具体的には、新株を発行して一般大衆に売り出し、株式買受代金の完済後に融資を行う仕組みであったが、融資を希望しない株主に対しては、一定の利率で算出した「株主優待金」を支払う旨を約定していた。会社側は、この優待金は資金調達のための必要経費(損金)であると主張して法人税の更正処分を争った。
あてはめ
まず、本件優待金の約定は、利益の有無に関わらず定期的に金員を支払うものであり、商法上の資本維持の原則に照らし法律上許されない。このような違法な支出は、資本調達の必要経費であっても損金算入できない。次に、実質的に見ると、本件優待金は株主が払い込んだ株金に対して支払われており、株主たる地位に基づいてなされる給付といえる。これは利益総会の決議がない違法なものであっても、その性質は配当(利益処分)に他ならず、所得計算の要素たる損金には当たらない。
結論
本件株主優待金は法人税法上の損金には該当せず、上告会社の請求は棄却される。
実務上の射程
法人税法における「損金」の意義を定義するとともに、商法(会社法)上の資本維持原則に反する支出や、実質的な配当と評価される支出の損金算入を否定した。私法上の違法性が税務上の損金性を否定する根拠となり得る点に注意が必要である。
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