免税所得と課税所得とがある場合における純損失繰戻による還付金額は、当該年度の純損失を前年度の免税所得と課税所得とに両所得の比に按分して繰り戻すいわゆる按分法によつて算定するのが相当である。
免税所得と課税所得とがある場合における純損失繰戻による還付金額算定の方法。
所得税法(昭和29年法律52号による改正前)20条,所得税法(昭和29年法律52号による改正前)36条
判旨
純損失の繰戻しによる還付金額の算定において、前年度に免税所得と課税所得が混在する場合、当該純損失は両所得の比率に応じて按分して繰り戻すべきである(按分法)。所得税法上の免税は税額の徴収を免除するに過ぎず、純損失の発生原因という偶然の事情に左右されない按分法が公平の観点から妥当である。
問題の所在(論点)
前年度に免税所得と課税所得がある場合、純損失の繰戻しによる還付金額(所得税法36条)の算定手法として、発生原因により区分する「加減法」と、所得比率で割り振る「按分法」のいずれを採用すべきか。免税所得の性質および公平な税負担の観点から問題となる。
規範
純損失の繰戻しによる還付制度(所得税法36条)は、期間計算主義に伴う税負担の不公平を是正するための例外的措置である。所得税法が総合課税及び累進税率を採用していることに鑑みれば、同条にいう「課税総所得金額」は前年度の算定基礎となった「総所得金額」と同義と解すべきである。したがって、還付金額の算定にあたっては、当該年度の純損失が前年度の総所得金額(免税所得と課税所得の合計)のいずれの層にも等しく含まれているものとして扱う「按分法」によるのが合理的である。
重要事実
納税者(上告人)は、前年度において免税事業から生じた免税所得と、その他の課税事業から生じた課税所得を有していた。当該年度に純損失が発生したため、前年度の所得に繰り戻して所得税の還付を求めたところ、課税当局は「按分法」(純損失を前年度の免税所得と課税所得の比率で按分し、課税所得に割り当てられた分のみ還付対象とする方法)を用いて還付額を算定した。これに対し、納税者は純損失の発生原因(課税事業か否か)に基づいて区分する「加減法」によるべきだと主張して争った。
事件番号: 昭和36(オ)944 / 裁判年月日: 昭和43年11月13日 / 結論: 棄却
いわゆる株主相互金融を営む会社において、融資を希望しない株主に対し「株主優待金」の支払をしても、法人税法上は、その支出を会社の損金に算入することは許されない。
あてはめ
まず、免税所得は非課税所得と異なり、本来課税対象となり得るものであり、免税とは単に税額の徴収を免除する趣旨にすぎない。次に、加減法を採用すると、純損失が免税事業と課税事業のいずれから発生したかという「偶然の事情」によって還付額が極端に変動することになり、不当な差異が生じる。これに対し、按分法は純損失を総所得全体に均等に割り当てるため、累進税率構造下においても結果の公平・妥当を期することができる。本件審査決定が按分法を用いたことは、所得税法の規定の合理的解釈に合致する。
結論
純損失の繰戻しによる還付額の算定には按分法を用いるのが正当である。したがって、按分法を是認した原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
免税所得が存在する場合の純損失の取扱いを明示した判例であり、所得税法の「総合課税」と「累進税率」の構造から、還付計算における公平性を重視する姿勢を示している。答案上は、税務上の計算手法に争いがある際、単なる計算法の問題としてではなく、制度趣旨(期間計算の不合理是正)や累進税率下での公平性という観点から、按分法の合理性を論述する際に活用できる。
事件番号: 昭和39(行ツ)6 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
破産宣告後の原因に基づく破産者の所得に課せられた所得税は、破産法第四七条第二号但書にいう「破産財団ニ関シテ生シタル」請求権にあたらない。
事件番号: 昭和38(オ)725 / 裁判年月日: 昭和39年11月13日 / 結論: 棄却
所得税法に所得推計の規定が置かれる以前においても、信頼しうる調査資料を欠くため所得の実額調査のできない場合に、適当な合理的な推計方法をもつて所得額を算定することは、同法の当然許容していたところと解すべきである。
事件番号: 昭和30(オ)735 / 裁判年月日: 昭和33年6月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】推計課税において、特段の事情がない限り仕入品の利益率から売上品の利益率を推定することは合理的であり、課税庁が更正時に使用しなかった資料であっても、それが所得を適正に推計し得るものである限り、更正の正当性を基礎付ける証拠として用いることができる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和26年度の所得税につ…