民法第九七条ノ二第三項但書の主張立証責任は、公示による意思表示到達の無効を主張する者にある。
民法第九七条ノ二第三項但書の過失の主張立証責任
民法97条ノ21項3項,民訴法第2編第3章1節(257条の前)
判旨
公示による意思表示において、表意者が相手方の所在を知らないことにつき過失があったとの主張立証責任は、その意思表示の無効を主張する側が負う。
問題の所在(論点)
民法98条3項(公示による意思表示の効力)の規定に基づき、相手方の所在を「知るにつき過失があった」ことの主張立証責任は、意思表示の有効を主張する者(表意者側)と無効を主張する者(相手方等)のいずれが負うか。
規範
公示による意思表示が効力を生じない原因となる「表意者の過失」(民法98条3項但書、旧97条の2第3項但書)の存否については、意思表示の効力を否定しようとする者がその主張・立証責任を負う。
重要事実
被上告人(表意者)は、相手方である訴外Dの所在が不明であったため、公示による意思表示の手続きをとった。これに対し上告人は、被上告人がDの所在を知らないことにつき過失があったため、当該意思表示は無効であると主張したが、原審(二審)においてその過失に関する具体的な主張および立証を行っていなかった。
あてはめ
公示による意思表示は、相手方が不知の場合に意思表示を可能とする制度である。同条3項但書は、例外的に意思表示の到達を否定する規定であるため、その要件たる「過失」の存在は、公示による意思表示の無効を主張する側が立証すべき事由に当たる。本件では、上告人が原審においてこの過失について何ら主張・立証をしていない以上、過失の存在を前提とした意思表示の無効主張は認められない。
結論
公示による意思表示の無効を主張する側が過失の主張立証責任を負うため、上告人の主張は排斥され、意思表示は有効となる。
実務上の射程
公示による意思表示の有効性を争う実務において、立証責任の所在を明確にした点に意義がある。答案上では、公示送達や公示による意思表示の効力が論点となる際、要件論としての「過失」の検討に付随して、その主張立証責任の分配を指摘する形で利用する。
事件番号: 昭和38(オ)186 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法110条の「正当な理由」の成否は、相手方が代理権があると信じたことについての過失の有無によって決せられるべきであり、本人の過失の有無は要件とならない。 第1 事案の概要:被上告人(本人)の代理人であるD・Eらが、授与された代理権の範囲を越えて、訴外Fの上告人(相手方・銀行側)に対する債務の連帯…
事件番号: 昭和32(オ)296 / 裁判年月日: 昭和34年7月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】占有が過失に基づく不法行為によって始まった場合には、民法295条2項の類推適用(または直接適用)により、留置権を主張することはできない。 第1 事案の概要:上告人は本件建物を占有し、これについて生じた債権を有することを理由に留置権の抗弁を主張した。しかし、第一審および原審において、上告人による本件…
事件番号: 昭和32(オ)861 / 裁判年月日: 昭和34年2月5日 / 結論: 棄却
民法第一一〇条による本人の責任は、いわゆる正当の理由が本人の過失によつて生じたことを要件とするものではない。
事件番号: 昭和36(オ)78 / 裁判年月日: 昭和38年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法110条の表見代理が成立するためには、相手方が代理権があると信じ、かつ信ずるにつき正当の事由があることを具体的に主張する必要があり、単に代理権があると信じていたという事実の主張のみでは足りない。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人B1がB2を代理して消費貸借契約や抵当権設定、代物弁済予約を…