抵当権設定の仮登記がある不動産につき第三者が所有権取得登記をした場合、仮登記権利者は、右第三者に対し直接に本登記手続を請求することができるが、また仮登記義務者に対し本登記手続を請求することもできると解するのが相当である。
抵当権設定の仮登記後三者が所有権取得登記をした場合における仮登記権利者のなす本登記請求の相手方
民法177条,不動産登記法2条,不動産登記法7条,不動産登記法54条,不動産登記法55条
判旨
抵当権の仮登記後、第三者に所有権が移転した場合、仮登記権利者は、仮登記義務者または現在の登記名義人である第三者のいずれに対しても、本登記手続を請求することができる。
問題の所在(論点)
抵当権設定の仮登記がなされた不動産につき、第三者に所有権が移転した場合、本登記請求の相手方は誰か。仮登記義務者か、それとも現在の登記名義人である第三者か。
規範
仮登記権利者の地位を保全するという制度の本旨に照らせば、仮登記後に不動産の所有権が第三者に移転した場合でも、仮登記権利者は依然として仮登記義務者に対し、仮登記に基づく本登記を請求することができる。また、仮登記の順位保全の効力は第三者も受忍すべき義務があるため、仮登記権利者は現在の登記名義人たる第三者に対し、直接本登記の協力を求めることもできる。すなわち、仮登記権利者は、仮登記義務者または第三者のいずれか一方を選択して本登記を請求し得る。
重要事実
不動産について抵当権設定の仮登記がなされた後、当該不動産の所有権が仮登記義務者から第三者(上告人)へ移転し、その旨の登記が完了した。仮登記権利者は、この状況において本登記請求権を行使しようとしたが、その相手方を誰にすべきかが争われた。
事件番号: 昭和34(オ)61 / 裁判年月日: 昭和35年7月27日 / 結論: 棄却
抵当権の仮登記ある不動産の所有権が第三者に移転したときは、仮登記権利者は第三者に対し直接に抵当権設定本登記手続を請求することができる。
あてはめ
仮登記制度は、後日なされる本登記の順位を保全するためのものである。仮登記義務者は、契約上の義務として本登記手続をなすべき地位を失わないため、これに対する請求は認められる。一方で、現在の所有権を取得した第三者は、仮登記の順位保全効力を認容すべき義務を負う立場にある。したがって、第三者も本登記義務を負うものと解され、権利者は便宜、両者のいずれに対しても請求をなし得るといえる。これにより、仮登記権利者の確実な権利実現が図られる。
結論
仮登記権利者は、仮登記義務者または現在の所有権取得者である第三者のいずれに対しても本登記を請求することができる。
実務上の射程
不動産登記法上の実務では、所有権移転の仮登記と、本件のような抵当権設定等の仮登記とで取扱いを峻別する契機となった判例である。所有権仮登記の場合は現在の登記名義人を相手方とする必要がある(不動産登記法109条参照)のに対し、抵当権等の仮登記では相手方の選択を認める点に実務上の意義がある。答案上は、登記請求権の相手方の確定において、物権変動の経緯と仮登記の目的を考慮する際の論拠として用いる。
事件番号: 昭和35(オ)607 / 裁判年月日: 昭和37年6月12日 / 結論: 棄却
抵当権設定契約に基づく抵当権設定登記手続請求事件において、原告は抵当権の被担保債権は、抵当権設定の日に被告に貸し付けた貸付金債権であると主張したのに対し、裁判所が右被担保債権は右設定の日より三、四箇月前に訴外人と被告との間に成立した、金銭消費貸借契約につき、右設定の日に債権者を原告とする更改契約がなされたうえ、原告と被…
事件番号: 昭和35(オ)469 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
仮登記後本登記をするまでの間に、仮登記義務者により本登記の目的たる権利と相容れない処分が行われ、これに基づく第三者の権利取得の登記がなされたとしても、右本登記が為された以上、右第三者の権利取得は否認され、その登記の抹消を求めることができる。(同旨、昭和三二年六月七日第二小法廷判決、民集一一巻九三六頁、昭和三二年六月一八…
事件番号: 昭和35(オ)865 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
抵当権者不知の間に不法に抹消された抵当権設定登記の回復登記について、登記上利害関係を有する第三者は承諾を拒みえない。
事件番号: 昭和37(オ)1355 / 裁判年月日: 昭和39年12月25日 / 結論: 棄却
抵当権設定登記をする前に被担保債権の一部が弁済されても、債権者はその債権全額について右登録手続を請求することができる。