抵当権の仮登記ある不動産の所有権が第三者に移転したときは、仮登記権利者は第三者に対し直接に抵当権設定本登記手続を請求することができる。
抵当権の仮登記ある不動産の所有権移転と右仮登記の本登記義務者。
民法369条,不動産登記法7条,不動産登記法26条
判旨
仮登記済の抵当不動産が第三者の所有に帰した場合、仮登記権利者はその第三者に対し、直接に本登記(抵当権設定登記手続)への協力を請求できる。
問題の所在(論点)
仮登記がなされた後に不動産の所有権を取得した第三者に対し、仮登記権利者が直接本登記手続の履行を請求できるか。すなわち、本登記請求の相手方は誰か。
規範
不動産について仮登記がなされた後、当該不動産の所有権が第三者に移転した場合、その第三者は仮登記の付着した状態の権利を取得したことを了知しているといえる。したがって、仮登記権利者は、現在の所有者である第三者に対し、直接に本登記手続への協力を請求することが可能であり、元の仮登記義務者に対して請求することを要しない。
重要事実
本件では、抵当権設定の仮登記がなされた不動産について、その後に所有権が第三者(上告人)に移転した。仮登記権利者は、現在の所有者である第三者に対し、抵当権設定の本登記手続への協力を求めて提訴した。これに対し、被告側(第三取得者)は、仮登記権利者は元の設定者(仮登記義務者)に対して請求すべきである等と主張して争った。
事件番号: 昭和35(オ)427 / 裁判年月日: 昭和37年5月25日 / 結論: 棄却
抵当権設定の仮登記がある不動産につき第三者が所有権取得登記をした場合、仮登記権利者は、右第三者に対し直接に本登記手続を請求することができるが、また仮登記義務者に対し本登記手続を請求することもできると解するのが相当である。
あてはめ
仮登記済みの不動産を取得した第三者は、登記簿上、将来本登記がなされることによって自らの権利が制限を受ける可能性があることを認識した上で取得している。本件においても、上告人は仮登記済みの抵当不動産であることを了知して取得したのであるから、実体上の権利変動に基づき、現在の登記名義人として登記手続に協力すべき立場にある。そのため、仮登記義務者を経由することなく、直接第三者に対して本登記を請求することを認めるのが相当である。
結論
仮登記権利者は、第三取得者に対し直接に本登記(抵当権設定登記)手続への協力を請求できる。原審が同趣旨で上告人の請求を排斥した判断は正当である。
実務上の射程
仮登記の本登記請求における被告適格を画定した判例である。所有権移転の仮登記と異なり、抵当権等の制限物権の仮登記の場合、現在の所有者が登記義務者としての地位を承継すると解する。答案上は、登記請求権の相手方が誰であるかを論じる際に、本判例を根拠に現在の権利名義人(第三取得者)への直接請求を肯定する流れで使用する。
事件番号: 昭和35(オ)607 / 裁判年月日: 昭和37年6月12日 / 結論: 棄却
抵当権設定契約に基づく抵当権設定登記手続請求事件において、原告は抵当権の被担保債権は、抵当権設定の日に被告に貸し付けた貸付金債権であると主張したのに対し、裁判所が右被担保債権は右設定の日より三、四箇月前に訴外人と被告との間に成立した、金銭消費貸借契約につき、右設定の日に債権者を原告とする更改契約がなされたうえ、原告と被…
事件番号: 昭和35(オ)469 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
仮登記後本登記をするまでの間に、仮登記義務者により本登記の目的たる権利と相容れない処分が行われ、これに基づく第三者の権利取得の登記がなされたとしても、右本登記が為された以上、右第三者の権利取得は否認され、その登記の抹消を求めることができる。(同旨、昭和三二年六月七日第二小法廷判決、民集一一巻九三六頁、昭和三二年六月一八…
事件番号: 昭和49(オ)614 / 裁判年月日: 昭和51年10月8日 / 結論: 棄却
先順位の根抵当権が設定されている不動産を目的とする仮登記担保においては、目的不動産の価額から根抵当権の極度額を控除した残余価額と当該仮登記担保の被担保債権額とを比較して清算金債務の有無及び数額を決すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)343 / 裁判年月日: 昭和36年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理人として売買契約等の交渉に当たった者が、真の買受人であるか、それとも本人の代理人として行動したに過ぎないかは、証拠を総合して判断される事実認定の問題である。本判決は、交渉の衝に当たった事実があるからといって直ちにその者を真の権利者と認めることはできないとした。 第1 事案の概要:第一審参加人E…