宅地建物取引業者は、直接の委託関係はなくても、業者の介入に信頼して取引するに至つた第三者に対して、信義誠実を旨とし、権利者の真偽につき格別に注意する等の業務上の一般的注意義務がある。
委託を受けない宅地建物取引業者の業務上の注意義務。
民法1条2項,宅地建物取引業法13条
判旨
不動産仲介業者は、直接の委託関係がない第三者に対しても、その介入を信頼して取引を行う者に対し、信義則上、権利者の真偽を確認すべき業務上の一般的注意義務を負う。
問題の所在(論点)
不動産仲介業者が、直接の委託関係にない取引の相手方(第三者)に対しても、権利者の本人確認等の注意義務を負うか。また、他の同業者の過失が介在した場合に因果関係が遮断されるか。
規範
不動産仲介業者は、直接の委託関係がない者であっても、業者の介入を信頼して取引を行うに至った第三者一般に対しては、信義誠実の原則に基づき、権利者の真偽につき格別に注意を払う等の業務上の一般的注意義務を負う。また、仲介業者がこの注意義務を怠ったことにより損害が生じた場合、他の者の過失が介在しても、通常生ずべき損害との間に相当因果関係が認められる限り、不法行為責任(民法709条)を免れない。
重要事実
不動産仲介業者である上告人は、本件貸地を同業者Dに紹介したにとどまらず、真実の地主Fではない詐称者Eを地主であるとして被上告人に紹介面接させた。さらに、上告人は契約書に立会人として署名捺印し、被上告人に対してEが真の地主であると誤信させた。被上告人はこれを信じて取引を行い、後に損害を被った。上告人は、被上告人との間に直接の委託関係がないことや、Dの過失が介在していることを理由に責任を否定して争った。
あてはめ
上告人は単なる情報提供にとどまらず、被上告人に対し詐称者Eを真実の地主として紹介・面接させ、契約書に立会人として署名捺印している。このような態様で介入した以上、被上告人が上告人の介入を信頼して取引に入ったことは明らかであり、信義則上の注意義務が発生する。上告人は権利者の真偽を格別に注意すべき立場にありながらこれを怠っており、過失が認められる。また、同業者Dの過失が介在していたとしても、上告人の積極的な紹介行為等が損害を招いた直接的な契機となっている以上、相当因果関係は中断されないと解される。
結論
上告人は被上告人に対し、仲介業者としての業務上の一般的注意義務違反に基づく損害賠償責任を負う。
実務上の射程
仲介業者と被害者との間に直接の契約関係(媒介契約)がない事案において、仲介業者の不法行為責任を肯定する際の有力な根拠となる。特に「立会人としての署名捺印」や「面接のセット」など、取引の信頼性を高める外観を作り出した場合に射程が及ぶ。因果関係の判断においても、同業者の過失介在のみでは責任が否定されないことを示す実務上重要な判決である。
事件番号: 昭和34(オ)126 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
第二審判決理由を是認した判決。