いわゆる社交喫茶店が現に営業中、客の飲食した代金の支払に関する紛争から右営業上の被用者がその店の奥で客を殴つて負傷させた場合、右暴行により客の蒙つた損害は、被用者が事業の執行につき加えた損害というべきである。
被用者が事業の執行につき第三者に加えた損害と認められた一事例
民法715条
判旨
被用者が顧客に対して加えた暴行が、店舗内での飲食代金支払に関する紛争に際して行われたものである場合、その行為は使用者の「事業の執行につき」なされたものと認められる。
問題の所在(論点)
喫茶店の従業員が顧客に対して行った故意の暴行が、民法715条1項にいう「事業の執行につき」なされたものといえるか。
規範
民法715条1項の「事業の執行につき」とは、被用者の職務権限内の行為のみならず、客観的に見て被用者の職務の範囲に属すると認められる行為を包含する(外形標準説)。被用者が故意に加害行為に及んだ場合であっても、それが事業の執行と密接な関連を有する状況下で行われたのであれば、同要件を充足する。
重要事実
上告人らが経営する社交喫茶店において、営業中に被上告人が飲食した代金の支払いに関して紛争が発生した。その際、上告人らに雇用されていた従業員(被用者)が、同店の奥において被上告人に暴行を加えた(加害行為)。
あてはめ
本件暴行は、上告人らが経営する店舗の現に営業中に行われており、かつ、その発端は店舗における飲食代金の支払いという事業に関連する紛争にある。また、場所的にも店舗の奥という事業拠点内で行われている。このような状況下での加害行為は、客観的に見て事業の執行と密接に関連する行為であると評価される。したがって、たとえ被用者が故意に加害を加えたものであっても、事業の執行につきなされたものと解するのが相当である。
結論
被用者の加害行為は「事業の執行につき」なされたものと認められ、使用者である上告人らは使用者責任を免れない。
実務上の射程
被用者の暴行等の不法行為について使用者責任を追及する際、外形標準説に基づき「代金支払紛争」という事業関連性から職務関連性を肯定する典型例として機能する。故意の暴行であっても職務との密接関連性があれば足りることを示す事案である。
事件番号: 昭和32(オ)990 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 棄却
タクシー会社に自動車運転助手兼整備係として雇われ、会社からの注意にもかかわらず運転資格も持たないで、平素洗車給油等の目的で車庫から給油所まで短距離の間営業用自動車の運転をしていた者が、運転技術修得のため他の場所で同会社の営業用自動車を運転中、追突事故により他人に損害を与えたときは、右損害は同会社の「事業の執行ニ付キ」生…