製造業者が製造行為を廃止した後原料の売却処分によつて生じた所得は所得税法(昭和二五年法律第七一号による改正前)第九条第一項第九号にいう事業等所得であつて同項第七号の譲渡所得ではない。
製造業者が製造行為を廃止した後その原料の売却処分によつて生じた所得は所得税法(昭和二五年法律第七一号による改正前)第九条第一項第九号の事業等所得か
所得税法(昭和25年法律71号による改正前)9条1項本文7号,所得税法(昭和25年法律71号による改正前)9条1項本文9号
判旨
製造業者が製造を廃止した後に、その原料たる残品を売却処分して得た所得は、譲渡所得ではなく「事業等所得(現・事業所得)」に該当する。
問題の所在(論点)
事業を廃止した後に、その事業のために保有していた棚卸資産(原料残品)を処分して得た所得は、所得税法上の「事業等所得」と「譲渡所得」のいずれに該当するか。
規範
事業を廃止した後に、その事業の用に供していた棚卸資産(原料等の残品)を売却処分することによって生じる所得は、当該事業の遂行に付随して発生するものと解される。したがって、これを資産の譲渡による所得(譲渡所得)と解するのではなく、事業活動から生じた所得(事業等所得)として扱うべきである。
重要事実
花莚(かえん)の製造業を営んでいた者が、製造行為を廃止した。その後、製造のために保有していた原料である藺草(いぐさ)等の残品を売却処分し、これによって所得を得た。この所得の性質が、当時の所得税法上の「事業等所得」か「譲渡所得」かが争点となった。
事件番号: 昭和27(オ)455 / 裁判年月日: 昭和30年7月26日 / 結論: 棄却
所得税法(昭和二五年法律第七一号による改正前)第一〇条第二項の「仕入品の原価」とは、仕入れし得べき価格ではなく、仕入品の現実の取得原価と解すべきである。
あてはめ
本件における藺草等の残品は、もともと製造業という事業のために仕入れられた原料であり、棚卸資産としての性質を有する。製造行為自体が廃止された後であっても、その残品を売却する行為は、それまで営んできた事業の後始末としての性質を持ち、事業活動に密接に関連するものである。そのため、当該売却による所得は、資産の所有そのものに起因する譲渡所得ではなく、事業に付随する「事業等所得」と評価するのが相当である。
結論
本件所得は「事業等所得」に該当し、譲渡所得とは当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
事業用資産のうち、棚卸資産の売却は事業遂行の一環(またはその残務整理)とみなされ、事業所得を構成することを示す射程を持つ。現行法においても、棚卸資産の譲渡が事業所得(または雑所得)に区分され、譲渡所得から除外される(所得税法33条2項1号)という実務上の取り扱いの根拠となり得る判例である。
事件番号: 昭和34(オ)267 / 裁判年月日: 昭和35年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】納税者の帳簿が完備せず直接資料を欠く場合、後日の在庫高から過去の平均在庫高を推定して所得金額を算定する推計課税の方法も、合理的である限り適法である。 第1 事案の概要:上告人は、昭和24年度の所得金額について税務署長(被上告人)から更正処分を受けた。上告人の帳簿は不完備であり、正確な所得を直接把握…
事件番号: 平成14(行ヒ)112 / 裁判年月日: 平成17年11月8日 / 結論: 破棄差戻
昭和62年に個人が非上場株式を低額で譲り受けたことによる給与所得に係る収入金額とすべき金額,同年に個人が法人に対し非上場株式を低額で譲渡したことによる譲渡所得に係る総収入金額に算入すべき金額及び同年に個人が有利な発行価額による非上場の新株を取得する権利を与えられたことによる一時所得に係る総収入金額に算入すべき金額の各計…