第三者の提起した訴状に請求の趣旨として「仮差押命令に基く債務者名義の某預金債権の仮差押を許さない」と記載されている場合でも、請求の原因において、右預金債権はその名義にかかわらず自己に属する旨主張し、仮差押命令の当否を問題としていないことが看取できるときは、原告は、民訴第七四四条により仮差押命令の取消を求めているのではなく、同法第七四八条、第五四九条により仮差押の執行不許の宣言を求めているものと解すべきである。
民訴法第七四四条の異議ではなく同法第七四八条第五四九条の異議と認められた事例
民訴法744条,民訴法748条,民訴法549条,民訴法393条3項
判旨
仮差押えの目的物である債権が債務者以外の第三者に帰属する場合、当該第三者は第三者異議の訴えによって執行の不許を求めるべきであり、仮差押命令自体の取消しを求める仮差押異議の手続によるべきではない。
問題の所在(論点)
債務者以外の第三者が、仮差押えの目的物である債権の帰属を主張して争う場合、保全命令に対する異議(仮差押異議)と第三者異議の訴えのいずれの手続によるべきか。また、裁判所は当事者の主張をどのように解釈して審理すべきか。
規範
第三者が仮差押えの執行目的物について所有権その他執行を阻止する権利を有する場合、その救済手段は民事執行法上の第三者異議の訴え(旧民訴法549条、748条準用)によるべきである。仮差押命令そのものの当否を争う保全異議(旧民訴法744条)とは、訴訟物の性質および判決の主文(執行不許か命令取消しか)において明確に区別される。
重要事実
債権者Aは、債務者Dに対する債権に基づき、D名義の銀行預金債権を仮差押えした。これに対し、第三者(被上告人)が、当該預金は名義にかかわらず実質的に自分に帰属するものであると主張して訴えを提起した。第一審および原審は、この訴えを仮差押命令に対する異議と解し、仮差押決定を取り消す旨の判決を下したため、Aが上告した。
あてはめ
被上告人の請求の趣旨は、仮差押命令の当否(発令要件の存否)を問題とするものではなく、預金債権が自己に帰属することを理由に執行の排除を求めるものである。これは、名義はDであっても実体的な権利者は自分であるという実体法上の権利主張に基づく。したがって、本件は仮差押異議事件ではなく、実質的には仮差押の目的物に対する第三者異議事件として構成されるべきものである。原審がこれを取り違え、執行不許ではなく仮差押決定の取消しを命じたのは、訴訟手続および法令の適用に誤りがある。
結論
本件は第三者異議の訴えとして扱うべきであり、預金債権が第三者に帰属することが確定している以上、仮差押えの執行は許されない。原判決を破棄し、執行不許を宣言する。
実務上の射程
債権執行において、第三者が自己の権利を主張して執行を阻止しようとする場合の正当な訴訟手段を画定した。答案上では、執行対象の帰属が争点となる場合に、保全異議(債務者が保全命令の要件欠如を争うもの)と第三者異議(第三者が実体法上の権利を主張するもの)を混同しないための書き分けの根拠として利用できる。
事件番号: 昭和31(オ)80 / 裁判年月日: 昭和33年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記には公信力がないため、真実の権利関係に合致しない登記を信頼して取引をしたとしても保護されず、また、仮差押物件が自己の所有に属しない以上、当該差押を排除する利害関係を有しない。 第1 事案の概要:本件において、上告人は特定の不動産に対する仮差押決定に対し、当該不動産が自己の財産であると主張…