乙所有の土地につき、甲のため所有権移転登記請求権保全の仮登記がなされた後、乙死亡し、その相続人丙が限定承認をした場合に、その後甲において所有権取得登記をなした時は、甲はその所有権の取得を以つて、乙の相続債権者に対抗することができる。
限定承認前の仮登記にもとずくその後の本登記の効力
民法922条,民法927条,民法177条,不動産登記法7条
判旨
仮登記により順位が保全された所有権は、条件成就により移転し、その仮登記に基づく本登記を完了すれば、限定承認をした相続人等の第三者に対抗することができる。
問題の所在(論点)
所有権移転請求権保全の仮登記がなされた不動産について、その後に限定承認がなされた場合、仮登記に基づく本登記を経た譲受人は、限定承認をした相続人等の第三者に対して所有権の取得を対抗できるか。
規範
代物弁済予約に基づき所有権移転請求権保全の仮登記がなされた場合、予約完結権の行使等により条件が成就し、仮登記に基づく本登記がなされれば、その所有権の取得を第三者に対抗することができる。
重要事実
本件土地につき代物弁済契約の予約がなされ、昭和18年1月8日にEのために所有権移転請求権保全の仮登記がなされた。その後、所有者Fが死亡し、昭和20年5月19日に相続人Gが限定承認の申述をした。Eは予約完結の意思表示(条件成就)を経て、昭和25年11月8日に仮登記に基づく本登記を完了した。
事件番号: 昭和38(オ)1099 / 裁判年月日: 昭和41年1月21日 / 結論: 棄却
所有権移転請求権保全の仮登記のなされた土地の仮換地の上に存する右土地所有者の所有する建物について抵当権が設定された場合には、右建物の競落人は、法定地上権を取得するが、右仮登記に基づいて所有権移転の本登記を経た者に対しては、右法定地上権をもつて対抗することができない。
あてはめ
本件では、限定承認がなされる前の昭和18年の時点で、既にEのために所有権移転請求権保全の仮登記がなされていた。この仮登記によって移転登記の順位が保全されているところ、条件成就(予約完結の意思表示)によって所有権はEに移転し、昭和25年に本登記が完了している。限定承認の申述よりも前に仮登記による順位保全がなされている以上、仮登記に基づき所有権を取得したEは、限定承認をした相続人らに対抗できるものと解される。
結論
条件成就の日以後、仮登記に基づく本登記を経た譲受人は、本件土地所有権の取得をもって第三者に対抗することができる。
実務上の射程
仮登記の対抗力と限定承認の効力の関係を示す。相続債務の清算手続である限定承認よりも、先に仮登記を備えていた権利者の優先順位が維持されることを確認する際に活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)1407 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
請求権保全の仮登記でも、これに基づく本登記がなされたときは、仮登記以後におけるこれと相容れない中間処分の効力を否定する効果を有するものと解すべきであり、所有権移転請求権保全の仮登記以後における所論賃借権の設定も右にいう仮登記と相容れない中間処分たるを失わない(昭和三三年(オ)第八七一号同三六年六月二九日第一小法廷判決、…
事件番号: 昭和40(オ)1377 / 裁判年月日: 昭和42年8月24日 / 結論: 棄却
建物所有を目的とする借地権の設定後地上建物の保存登記前にその土地の所有権移転請求権保全の仮登記がされた場合、借地権者は、右仮登記に基づいて本登記をした者に対し、借地権を対抗することができない。
事件番号: 昭和28(オ)294 / 裁判年月日: 昭和30年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の保存登記において所在地の地番の表示に誤記があっても、当該建物につきなされた登記と認め得る限り、その保存登記は有効である。また、有効な登記であればこそ、更正登記により当初から更正後の内容で有効な登記が存在したものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人は、目的建物の所有権保存登記を備えていた。…
事件番号: 昭和34(オ)1106 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
宅地およびその上の建物を甲が所有していたところ、抵当権の実行により乙が建物を競落して、法定地上権を取得し(その後に宅地につき土地区画整理法によつていわゆる現地換地による仮換地の指定がなされた)、次いで丙が地上権とともに建物を譲受け、さらにその後丁が甲から宅地を譲受けてそれぞれ所有権移転登記を経由した場合においては、丙が…