建物所有を目的とする借地権の設定後地上建物の保存登記前にその土地の所有権移転請求権保全の仮登記がされた場合、借地権者は、右仮登記に基づいて本登記をした者に対し、借地権を対抗することができない。
借地権の設定後地上建物の保存登記前に土地の所有権移転請求権保全の仮登記がされた場合における仮登記に基づいて本登記をした者に対する借地権の対抗力の有無
不動産登記法7条,建物保護ニ関スル法律1条
判旨
土地賃借権の対抗力具備(建物登記)が土地の仮登記より後になされた場合、たとえ賃貸借契約自体が仮登記前であっても、本登記による優先的効力により仮登記権利者には対抗できない。
問題の所在(論点)
土地賃貸借契約が仮登記の前になされていた場合において、建物保存登記(建物保護法1条による対抗力具備)が土地の仮登記後・本登記前になされたとき、賃借人は仮登記権利者に対抗できるか。
規範
請求権保全の仮登記に基づき本登記がなされた場合、仮登記後になされた中間処分の効力を否定する効果を有する。建物所有目的の土地賃借人が行う建物所有権保存登記は、土地の賃貸借に対抗力を付与する性質上、仮登記に基づく本登記と相容れない「中間処分」に準ずるものと解すべきである。
重要事実
土地賃借人である被告は、昭和24年に建物所有目的で本件土地を賃借した。原告は、被告の建物登記に先立ち、本件土地について所有権移転請求権保全の仮登記を経由した。その後、被告は昭和36年7月に建物保存登記を備えたが、原告は同年11月に右仮登記に基づく本登記を完了した。原告は土地所有権に基づき建物の収去等を求めた。
事件番号: 昭和38(オ)1407 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
請求権保全の仮登記でも、これに基づく本登記がなされたときは、仮登記以後におけるこれと相容れない中間処分の効力を否定する効果を有するものと解すべきであり、所有権移転請求権保全の仮登記以後における所論賃借権の設定も右にいう仮登記と相容れない中間処分たるを失わない(昭和三三年(オ)第八七一号同三六年六月二九日第一小法廷判決、…
あてはめ
被告が土地賃借権を取得したのは原告の仮登記前であるが、建物保存登記による対抗力具備は仮登記後である。建物保存登記は、土地賃借権の対抗力を発生させる点で「中間処分」に準ずるため、仮登記後の登記は本登記によってその効力を否定される。したがって、本登記を完了した原告の権利が優先し、被告は賃借権を対抗できない。
結論
土地賃借人は、仮登記に基づき本登記を経由した者に対し、その賃借権を対抗することができない。
実務上の射程
仮登記の対抗力(順位保全効)と建物保護法1条の関係を明確にした。実務上は、賃貸借の『成立』時ではなく『対抗力具備(登記)』時を基準に仮登記との優劣を決する点に留意が必要である。
事件番号: 昭和42(オ)360 / 裁判年月日: 昭和42年6月27日 / 結論: 棄却
建物所有を目的とする土地の賃借人は、その地上に所有権の登記のある建物を有する以上、その登記が、土地の賃貸人からの申請に基づく処分禁止の仮処分命令の登記をなす前提として、登記官吏の職権をもつてなされたものである場合でも、賃借権をもつて第三者に対抗することができる。
事件番号: 昭和34(オ)1106 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
宅地およびその上の建物を甲が所有していたところ、抵当権の実行により乙が建物を競落して、法定地上権を取得し(その後に宅地につき土地区画整理法によつていわゆる現地換地による仮換地の指定がなされた)、次いで丙が地上権とともに建物を譲受け、さらにその後丁が甲から宅地を譲受けてそれぞれ所有権移転登記を経由した場合においては、丙が…
事件番号: 昭和37(オ)18 / 裁判年月日: 昭和41年4月27日 / 結論: その他
土地賃借人は、該土地上に自己と氏を同じくしかつ同居する未成年の長男名義で保存登記をした建物を所有していても、その後該土地の所有権を取得した第三者に対し、「建物保護ニ関スル法律」第一条により、該土地の賃借権をもって対抗することができないものと解すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)1237 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
某町a番地の土地が同番のb、c等に分筆され、その旨の登記を経た後、a番のb、cの両土地を賃借した借地人が、両土地上に建築した建物につき、所在地番を旧番地たるa番と表示して、所有権保存登記をしたときは、右登記をもつて、a番のb、cの借地権を第三者に対抗することはできない。