所有権移転請求権保全の仮登記のなされた土地の仮換地の上に存する右土地所有者の所有する建物について抵当権が設定された場合には、右建物の競落人は、法定地上権を取得するが、右仮登記に基づいて所有権移転の本登記を経た者に対しては、右法定地上権をもつて対抗することができない。
所有権移転請求権保全の仮登記のなされた土地の仮換地の上に存する建物について抵当権が設定された場合と建物競落人の法定地上権。
民法388条,不動産登記法7条,土地区画整理法99条
判旨
土地の仮登記後・本登記前に建物へ抵当権が設定され、土地の本登記と建物競落による法定地上権の成立が競合する場合、建物競落人は仮登記権利者に法定地上権を対抗できない。
問題の所在(論点)
土地の所有権移転請求権保全の仮登記後に設定された建物抵当権に基づき、法定地上権が成立した場合、当該法定地上権は仮登記に基づく本登記手続を了した土地取得者に対抗できるか。法定地上権の成立が仮登記に抵触する処分にあたるかが問題となる。
規範
建物抵当権の設定により将来的に法定地上権(民法388条)を成立させることは、土地の所有権移転の本登記と抵触する処分にあたる。したがって、土地について所有権移転請求権保全の仮登記がなされた後、本登記がなされるまでの間に建物へ抵当権が設定された場合、建物競落人は法定地上権の成立を仮登記権利者に対抗し得ない。
重要事実
土地所有者Dは、被上告人との間で代物弁済予約を行い、被上告人は土地に所有権移転請求権保全の仮登記を経た。その後、Dは同一土地上の自己所有建物に上告人のための根抵当権を設定した。上告人はこの根抵当権を実行して建物を競落し、所有権を取得した。一方で被上告人も予約完結権を行使し、土地の仮登記に基づく本登記を完了した。上告人は、建物競落により土地に法定地上権が成立したと主張し、土地所有者となった被上告人に対抗した。
事件番号: 昭和38(オ)1407 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
請求権保全の仮登記でも、これに基づく本登記がなされたときは、仮登記以後におけるこれと相容れない中間処分の効力を否定する効果を有するものと解すべきであり、所有権移転請求権保全の仮登記以後における所論賃借権の設定も右にいう仮登記と相容れない中間処分たるを失わない(昭和三三年(オ)第八七一号同三六年六月二九日第一小法廷判決、…
あてはめ
法定地上権は、抵当権設定時に土地・建物が同一所有者に属していれば成立し、後の所有者変動は成立を妨げない。本件でも形式的には成立する。しかし、被上告人は建物抵当権の設定前に土地の仮登記を備えていた。土地所有者Dが建物に抵当権を設定し、競売により法定地上権を発生させることは、土地所有権の完全な行使を制限するものであり、実質的に仮登記後の土地処分と区別すべき理由はない。ゆえに、仮登記に基づく本登記がなされた以上、これに抵触する法定地上権の取得は被上告人に対抗できないと解される。
結論
建物競落人である上告人は、仮登記に基づき土地所有権を取得した被上告人に対し、法定地上権を対抗することはできない。
実務上の射程
仮登記の対抗力(順位保全効)が、法律の規定により発生する法定地上権にも及ぶことを示した重要な判例である。答案上は、法定地上権の成立要件(388条)を充足することを認めた上で、仮登記の効力が及ぶ「抵触する処分」にあたることを論じる際に用いる。
事件番号: 昭和34(オ)1106 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
宅地およびその上の建物を甲が所有していたところ、抵当権の実行により乙が建物を競落して、法定地上権を取得し(その後に宅地につき土地区画整理法によつていわゆる現地換地による仮換地の指定がなされた)、次いで丙が地上権とともに建物を譲受け、さらにその後丁が甲から宅地を譲受けてそれぞれ所有権移転登記を経由した場合においては、丙が…
事件番号: 昭和41(オ)312 / 裁判年月日: 昭和43年10月29日 / 結論: 棄却
借地法第一〇条に基づく買取請求権の行使により借地上建物の所有権が移転した場合においても、建物の賃借人は、借家法第一条によつて賃借権を対抗することができる。
事件番号: 昭和42(オ)268 / 裁判年月日: 昭和43年10月29日 / 結論: 棄却
甲から不動産所有権の譲渡を受けた乙が、所有権取得登記未経由のまま、右不動産を丙に譲渡したのち、かさねてこれを丁に譲渡した場合において、丙は、自己の所有権取得登記を経由しないかぎり、その所有権取得を丁に対抗することができない。
事件番号: 昭和30(オ)54 / 裁判年月日: 昭和31年6月28日 / 結論: 棄却
乙所有の土地につき、甲のため所有権移転登記請求権保全の仮登記がなされた後、乙死亡し、その相続人丙が限定承認をした場合に、その後甲において所有権取得登記をなした時は、甲はその所有権の取得を以つて、乙の相続債権者に対抗することができる。