前審の証拠調に関与したが裁判自体には関与しない裁判官は職務の執行から除斥されない。
前審の証拠調に関与した裁判官と除斥原因
民訴法35条6号
判旨
民事訴訟法24条1項4号(旧35条6号)にいう「裁判官が事件につき前審の裁判に関与したとき」とは、裁判官が前審の裁判そのものに関与した場合を指し、前審での証拠調べに関与したに留まる場合はこれに該当しない。
問題の所在(論点)
裁判官が第一審(前審)において証拠調べの手続に関与したことが、民事訴訟法上の除斥事由(前審の裁判への関与)に該当するか。
規範
除斥事由である「裁判官が事件につき前審の裁判に関与したとき」とは、裁判官が前審の裁判そのもの(判決等)に関与した場合をいう。前審において証拠調べに関与しただけでは、これに該当しないと解すべきである。
重要事実
上告人は、第二審の口頭弁論に関与した裁判官が、第一審において証人の尋問(証拠調べ)を行っていたことを捉え、当該裁判官は職務の執行から除斥されるべきであり、判決には違法があると主張して上告した。記録上、当該裁判官は第一審の証拠調べには関与していたが、第一審の裁判自体には関与していなかった。
あてはめ
本件において、問題となっている裁判官は、第一審の口頭弁論期日で証人尋問を行っているが、これは前審における証拠調べへの関与に過ぎない。前審の裁判自体に関与した事実は記録上認められない。したがって、証拠調べに関与したことをもって「裁判に関与した」とは評価できず、法定の除斥事由には当たらないといえる。
結論
当該裁判官が関与した判決に、除斥事由の規定に抵触する違法はない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
除斥事由の解釈において「前審の裁判」を厳格に捉える実務上の立場を明確にしている。審理の継続性を重視し、前審で付随的な手続に関与しただけの裁判官を排除しないことで、訴訟の効率を維持する機能を持つ。答案上は、除斥・回避の論点において、単なる準備手続や証拠調べへの関与が直ちに公正を害するものではないと論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和37(あ)1628 / 裁判年月日: 昭和41年7月20日 / 結論: 破棄差戻
ある裁判官が第一審裁判官としてその公判期日に証拠(判文参照)の取調をなし、該証拠が第一審判決の罪となるべき事実の認定の用に供されているときは、その裁判官は、刑訴法第二〇条第七号にいう前審の「裁判の基礎となつた取調に関与した」者としてその事件の控訴審における職務の執行から除斥される。
事件番号: 昭和28(あ)3564 / 裁判年月日: 昭和30年6月14日 / 結論: 棄却
所論判事は、本件犯罪の捜査、第一審、第二審を通じ、ただ第二審第二回公判の判決宣告に関与したのみに過ぎない。従つて、同判事が関与した民事裁判が本件第一審判決における事実認定の証拠に採用されたからといつて、同判事が除斥されるべき職務の執行をしたものということはできない。
事件番号: 昭和30(あ)16 / 裁判年月日: 昭和33年5月2日 / 結論: 棄却
刑訴二二六条又は同二二七条による証人尋問をした裁判官は当該被告事件の審判から除斥されるものでないことも当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第一三九六号同三〇年三月二五日第二小法廷判決、集九巻三号五一九頁)の趣旨に徴して明らかである