元金三五万円、弁済期三〇日後、利息三〇日につき一割、利息を支払えば借主の希望により弁済期を延期するとの約旨の消費貸借契約に付随し、借主が弁済期に元金を支払わないときは、時価三、〇六七、〇〇〇円相当の不動産の所有権を代物弁済として貸主に移転する旨を約したときは、右代物弁済の予約は、特別な事情のないかぎり、貸主が借主の窮迫に乗じて締結したものと認めるべきであつて、公序良俗に反し無効と解するのが相当である。
代物弁済の予約が公序良俗に反する一事例
民法90条,民法482条
判旨
金銭消費貸借契約に付随して締結された代物弁済の予約が、借受人の窮迫に乗じ、借入額に比して著しく高額な時価の物件を対象とするものである場合、公序良俗に反し無効である。
問題の所在(論点)
借入額と代物弁済物件の時価との間に著しい開きがある代物弁済の予約について、公序良俗(民法90条)違反として無効となるか。
規範
金銭消費貸借の際、借入額に比して代物弁済の対象物件の価額が著しく不均衡であり、かつ債権者が債務者の窮迫に乗じて締結したものと認められる場合には、当該代物弁済の予約は公序良俗(民法90条)に反し、無効となる。
重要事実
上告人は、被上告人らに対し、元金35万円、弁済期30日後、利息月1割(年120%相当)の条件で金銭を貸し付けた。その際、弁済期に元金を返済しないときは、元金の約8.7倍にあたる当時の時価306万7000円相当の不動産の所有権を代物弁済として移転する旨の予約を締結した。
あてはめ
本件では、元金35万円の債務に対し、その8倍半強にも当たる306万7000円相当の不動産を代物弁済の対象としている。このように著しく不均衡な内容の契約がなされた場合、他に特別な事情が立証されない限り、債権者が債務者の窮迫に乗じて締結したものと推認される。単に利息が高利であることのみならず、債務者の窮迫に乗じ、かつ給付と反対給付の間に著しい不均衡が存在することから、社会的妥当性を欠くといえる。
結論
本件代物弁済の予約は公序良俗に反し、無効である。
実務上の射程
暴利行為の公序良俗違反を判断する際の判断枠組みを示す。後に制定された仮登記担保契約に関する法律の趣旨を先取りするような内容であり、過剰な担保取得を制限する法理として重要である。答案上は、(1)主観的要件(窮迫・不慣れ等に乗じること)と(2)客観的要件(給付間の著しい不均衡)の両面から論述する際の根拠となる。
事件番号: 昭和38(オ)1111 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
債務額一三七万円の約四・五倍にあたる六〇九万五千円余の価額を有する土地および建物を目的とする代物弁済契約であつても、相手方の窮迫、軽卒に乗じ不当な利益を獲得する目的でしたものと認められない以上、右代物弁済契約は、民法第九〇条により無効であるとはいえない。
事件番号: 昭和33(オ)992 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代物弁済の予約に基づく所有権移転が、不動産価格と債務額に大きな差がある場合でも、相手方の窮迫等を利用して過当な利益を図る目的がない限り、直ちに公序良俗に反して無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人は被上告人から37万円を借り受け、利息制限法に基づく引き直し後の元本債務は38万1100円であっ…
事件番号: 昭和36(オ)1162 / 裁判年月日: 昭和38年1月18日 / 結論: 破棄差戻
譲渡担保契約において、期限に債務の弁済がないときは担保物件を債務の代物弁済に供する旨の約定を含む場合、被担保債権額に比し担保物件の価額が著しく高額であつて、債務者の経済的困窮に乗じて右の約定をなしたものとして右約定部分を公序良俗に反し無効と解すべきときでも、必ずしも譲渡担保契約全部が無効となるとは限らない。
事件番号: 昭和35(オ)1058 / 裁判年月日: 昭和36年6月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者の窮迫に乗じ不当な代物弁済契約を締結したといった事情がない限り、予約完結権の行使が公序良俗や信義則に反するものとはいえない。また、利息制限法施行前の合意に基づく遅延損害金を計算の基礎とすることも、直ちに権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(債務者)は、被上告人(債権者)との間…