村長が行政事件訴訟特例法第三条によつて訴訟当事者になる場合には、地方自治法第九六条第一項第一〇号による村議会を要しない。
村長が行政事件訴訟特例法第三条によつて訴訟当事者となる場合と地方自治法第九六条第一項第一〇号による村議会の議決の要否
行政事件訴訟特例法3条,地方自治法96条1項本文10号
判旨
地方自治法96条1項10号(現12号)により議会の議決を要するのは、地方公共団体が法人として当事者となる場合に限られ、行政処分を行った行政庁が当事者となる訴訟には適用されない。
問題の所在(論点)
行政処分を行った「行政庁」を被告とする訴訟において、当該行政庁が応訴(弁護士への委任等)を行うにあたり、地方自治法96条1項に基づき議会の議決を得る必要があるか。
規範
地方自治法96条1項10号(現12号)に基づき「権利を放棄し、又は訴えの提起、和解、あっせん、調停若しくは仲裁に関すること」について議会の議決を要するのは、地方公共団体が公法人として訴訟当事者(被告等)となる場合に限定される。これに対し、行政事件訴訟において「処分をした行政庁」がその職権行使の適法性を争うため当事者として応訴する場合には、同号の適用はない。
重要事実
上告人は、B村長を被告として行政処分(詳細は判決文からは不明)の取消し等を求める訴えを提起した。これに対し、村長は弁護士に訴訟委任して応訴したが、その際、村議会の議決を経ていなかった。上告人は、村長には地方自治法96条1項10号(当時)による議会の授権がないため、民事訴訟法上の訴訟能力・代理権に欠陥があり、弁護士に対する訴訟委任は無効であると主張して上告した。
事件番号: 昭和29(オ)550 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
昭和二四年法律第二一五号による農地調整法改正前においても、同法第四条によつて市町村農地委員会が行う農地等の所有権、賃借権等の設定、移転等の承認は同委員会の自由な裁量に委せられていたものと解すべきでない。
あてはめ
本件において被告となっているのは、地方公共団体である「村」そのものではなく、行政処分を行った行政庁としての「村長」である。地方自治法96条1項10号(当時)が議会の議決を要求している趣旨は、地方公共団体の財産的利害に影響を及ぼす行為を議会の統制下に置く点にある。しかし、行政庁が処分行政庁として訴訟の当事者となるのは行政訴訟法上の地位にすぎず、公法人たる地方公共団体自身が訴訟当事者となる場合とは性質を異にする。したがって、村長が被告として応訴する行為は同号の議決を要する事項には該当せず、議会の議決を欠いていても訴訟委任等の訴訟行為は有効である。
結論
行政庁を被告とする訴訟においては、議会の議決は不要であり、村長による弁護士への訴訟委任は有効である。上告は棄却される。
実務上の射程
行政事件訴訟法改正により、現在は処分取消訴訟の被告は原則として「行政庁」ではなく「国または地方公共団体」とされている(同法11条1項)。そのため、現在の取消訴訟において地方公共団体が被告となる場合は、原則として本判決の留保事項(議決が必要な場合)に該当しうる。もっとも、本判決の理屈は「処分行政庁」が当事者となる特殊な訴訟(例えば一部の無効確認訴訟や行政庁間の訴訟等)における議決の要否を判断する際の基準として依然として意義を有する。
事件番号: 昭和26(オ)40 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
食糧確保臨時措置法第七条により農業計画を生産者に提示しなければ、生産者の農産物供出義務は生じない。
事件番号: 昭和28(オ)1206 / 裁判年月日: 昭和30年5月31日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法施行規則第一条の二による農林大臣の承認は行政処分ではない。 二 自作農創設特別措置法施行規則第一条の二が自作農創設特別措置法第五条第四号の知事の承認につき農林大臣の承認を要するものと規定しても省令をもつて法律を変更するものではない。
事件番号: 昭和28(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和30年6月24日 / 結論: 棄却
一 産米供出個人割当額決定の方法につき法令上具体的の定めがない場合でも、右決定に当る村長は、この点につき一部落内の特定の生産者を何等いわれがなく他の生産者と区別して取り扱う裁量権を有するものではないが、判示の事実関係(判決理由参照)の下では、一部落内の特定の生産者をこの点につき他の生産者と区別して取り扱つたとしても、こ…
事件番号: 昭和35(オ)1198 / 裁判年月日: 昭和37年7月20日 / 結論: 棄却
農業委員会が国の所有農地についてした売渡決議及び関係書類の知事への進達は、行政事件訴訟特例法にいう行政庁の処分ではない。