一 産米供出個人割当額決定の方法につき法令上具体的の定めがない場合でも、右決定に当る村長は、この点につき一部落内の特定の生産者を何等いわれがなく他の生産者と区別して取り扱う裁量権を有するものではないが、判示の事実関係(判決理由参照)の下では、一部落内の特定の生産者をこの点につき他の生産者と区別して取り扱つたとしても、これをもつて、違法の裁量権の行使ということはできない。 二 職権による証人尋問の許される行政事件訴訟においては、証人として尋問すべき者を職権により当事者として尋問したという違法は、被尋問者が尋問を拒まず、当事者が異議を述べなかつた以上、責問権の放棄により治ゆされたものと解すべきである。
一 産米供出個人割当額決定の方法につき法令上具体的の定めがない場合と右決定に当る村長の裁量権の限界 二 証人として尋問すべき者を職権により当事者として尋問した違法と責問権放棄の許否
行政事件訴訟特例法1条,行政事件訴訟特例法9条,食糧管理法3条,食糧管理法施行規則1条,食糧管理法施行規則3条,昭和23年農林省令115号附則2項,民訴法141条,民訴法336条
判旨
行政庁の裁量権には一定の限界があり、いわれなく特定の個人を差別的に取り扱うことは許されないが、正当な理由に基づく区別であり、かつ実質的な不利益が生じていない場合には、裁量権の逸脱・濫用には当たらない。
問題の所在(論点)
行政処分の手続きや時期の決定が行政庁の裁量に委ねられている場合において、特定の個人に対し他の者と異なる取扱いをすることが、憲法上の平等原則等に照らし、裁量権の限界を超える違法なものとなるか。
規範
行政庁に裁量が認められる場合であっても、行政庁は、何ら正当な理由がなく特定の個人を差別的に取り扱い、これに不利益を及ぼす自由を有するものではない。したがって、行政庁の裁量権には法的な限界があり、当該区別が合理的な理由に基づくものか、また対象者に不当な不利益を課すものか等の観点から、その適法性が判断される。
事件番号: 昭和31(オ)173 / 裁判年月日: 昭和32年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審の訴えにおける「当事者が上訴によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったとき」の意義に関し、民事上告事件の審判の特例に関する法律の下であっても、判断遺脱を上告理由として主張することは可能であり、これを主張しなかった場合には再審の訴えは不適法となる。 第1 事案の概要:上告人…
重要事実
農地改革後の食糧管理法に基づき、市町村長が米の供出割当を行った。他の部落民には事前割当の方法で5月に通知されたが、上告人は従来から供出に非協力であり他者との協議が困難な状況にあった。そのため、当局は上告人に対し個別に作付反別や地力等を調査し、上告人が本来の農家でない点も考慮して負担を軽減した上で、同年12月に割当通知を行った。上告人は、この遅延した個別通知が憲法13条、14条等に反する差別的で違法な処分であると主張した。
あてはめ
まず、上告人が事前割当の手続きから除外された点は、上告人の非協力的な態度から他者との協議が不可能な状況にあったという事情によりやむを得ない。次に、通知の遅延についても、上告人の生産状況を個別精密に調査し、むしろ負担を軽減する等の配慮をするために生じたものであり、正当な理由がある。さらに、実際の収穫量は割当数量を供出するに十分な余裕があったことから、上告人に特段の実質的不利益は生じていない。これらの事情を総合すれば、本件の区別取扱いは「いわれのない差別」には当たらず、裁量の範囲内である。
結論
本件供出割当通知は、合理的な理由に基づく合理的な範囲内の区別であり、行政庁の裁量権の限界を逸脱した違法な処分とはいえない。
実務上の射程
行政庁の裁量権に「平等原則」による法的な限界(裁量権の逸脱・濫用)があることを明示した判例として重要である。答案上では、行政法の裁量論において、手続的妥当性や不当な差別的取扱いの有無を検討する際の規範として引用できる。特に、対象者の属性や過去の態度といった「合理的理由」の有無と、結果としての「不利益の程度」を相関的に考慮する枠組みとして有用である。
事件番号: 昭和26(オ)685 / 裁判年月日: 昭和28年7月3日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法施行令第一八条第二号にいう「農業に精進する見込のある者」相互の間で何人を農地売渡の相手方として決定するかは農地委員会の裁量に任されているものと解すべきであるから、右の決定が違法視されるのは、農地委員会の右裁量が社会観念上著しく妥当を欠き、その限界を越えるものと認められる場合に限ると解すべきである…
事件番号: 昭和27(オ)1064 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく買収農地の売渡相手の選定は、農業委員会の自由な裁量に委ねられており、その行使が著しく不合理でない限り適法である。 第1 事案の概要:上告人は、本件農地を含む土地を50万円で買い受けた実態があったが、農業委員会は本件農地の売渡計画において、上告人以外の第三者を売渡の相手方…
事件番号: 昭和29(オ)550 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
昭和二四年法律第二一五号による農地調整法改正前においても、同法第四条によつて市町村農地委員会が行う農地等の所有権、賃借権等の設定、移転等の承認は同委員会の自由な裁量に委せられていたものと解すべきでない。