食糧確保臨時措置法第七条により農業計画を生産者に提示しなければ、生産者の農産物供出義務は生じない。
食糧確保臨時措置法第七条による農業計画の指示と主要食糧農産物の供出義務
食糧確保臨時措置法(昭和23年法律182号)7条
判旨
食糧確保臨時措置法に基づく農業計画の指示は、生産者に生産確保義務及び具体的供出義務を課す重要な手続であり、その性質上、収穫期前になされるべきである。適法な指示手続を欠いたままなされた供出命令は、義務を発生させる基礎を欠くため違法である。
問題の所在(論点)
行政法上の義務を課す前段階の手続(農業計画の指示)が欠如、あるいは著しく遅延した場合に、その後の義務履行命令(供出命令)は適法といえるか。法が定める手続の不備が処分の効力に及ぼす影響が問題となる。
規範
行政処分が国民に対して義務を課すものである場合、その義務の発生根拠となるべき法定の手続は厳格に履践されなければならない。特に、生産数量の確保や供出義務を課す指示のような処分は、その目的(生産・供出の確保)に照らし、対象となる作業の開始前に適時になされることを要し、この手続を欠く場合には、後に義務履行を命じたとしてもその処分は違法となる。
重要事実
村長(上告人)は、食糧確保臨時措置法5条に基づき、生産者(被上告人)の昭和24年産麦類農業計画を定め、村役場の掲示板に公示した。しかし、同法7条が定める生産者に対する個別の「指示」を、収穫期が過ぎるまで行わなかった。その後、昭和24年8月8日になって初めて、当該農業計画の内容を通知し、麦の売り渡し(供出)を命じた。被上告人は、適法な指示手続を欠く供出命令は違法であるとして、その取り消しを求めた。
事件番号: 昭和29(オ)980 / 裁判年月日: 昭和30年11月22日 / 結論: 棄却
村長が行政事件訴訟特例法第三条によつて訴訟当事者になる場合には、地方自治法第九六条第一項第一〇号による村議会を要しない。
あてはめ
食確法7条2項・3項によれば、農業計画の指示は生産者に生産確保の努力義務を課し、具体的な供出義務(政府への売渡数量)を確定させる重要な手続である。農業計画の性質上、生産作業の開始前に指示されるべきところ、本件では昭和24年度麦類の収穫期を過ぎた後に通知がなされている。このような遅滞した通知は同法7条の「指示」とは解し得ない。したがって、義務発生の前提となる重要な手続が履践されていない以上、生産者に供出義務は生じておらず、これを命じた処分は根拠を欠くものといえる。
結論
本件供出命令は違法であり、取り消されるべきである。適法な指示手続を経ていない以上、被上告人に供出義務は存在しない。
実務上の射程
適正手続の観点から、義務を課す処分の前提となる先行手続の重要性を指摘する際に有用である。特に、行政主体が法的要件である通知や指示を怠ったまま、国民に一方的な義務(給付や作為)を課した場合の処分性の違法事由として引用できる。事情判決(行政事件訴訟法31条)の適用を否定した点も実務上留意すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和30年6月24日 / 結論: 棄却
一 産米供出個人割当額決定の方法につき法令上具体的の定めがない場合でも、右決定に当る村長は、この点につき一部落内の特定の生産者を何等いわれがなく他の生産者と区別して取り扱う裁量権を有するものではないが、判示の事実関係(判決理由参照)の下では、一部落内の特定の生産者をこの点につき他の生産者と区別して取り扱つたとしても、こ…
事件番号: 昭和25(オ)341 / 裁判年月日: 昭和27年4月18日 / 結論: 破棄差戻
行政事件訴訟特例法施行の日に農地買収計画に対する異議申立期間が満了し、当時の交通事情等により訴訟関係人らが同法の内容を知り得なかつた事情があるならば、同法施行後にかいても、右買収計画の取消を求める訴を提起するについて異議、訴願を経ない正当な事由があるものというべきである。
事件番号: 昭和34(オ)672 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分を行った旨の通知が、それ自体として新たな権利義務の変動を生じさせる公権力の行使に当たる場合には、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。 第1 事案の概要:上告人(行政庁側)は、昭和23年に自作農創設特別措置法に基づき被上告人らに対して農地売渡計画を決定し、売渡通知書を交付した。しかし、昭…