一 土地調整委員会が鉱業権設定許可の当否を判断するについて、鉱物の掘採によつて飲料用水源の枯渇するおそれが予見され、万一その害が実現すれば直接市民の生活に重大な影響を及ぼす事情にあるにかかわらず、右の害を防止し得ることを具体的に論証するとか一部区域を除外して許可する余地がないかどうかを検討する等十分な考慮をはらうことなく、単に事後における監督的措置のみを期待して許可を正当とすることは違法である。 二 鉱業出願許可取消の裁定申請事件において、鉱区内の岩山の半分を掘り尽すことによつて附近住民の唯一の飲料用水源が枯渇しないと断定し得る資料に乏しいのに、土地調整委員会が、右の資料のほか、将来における掘採計画や監督権の発動による掘採制限等の行政措置を勘案して、鉱業権の実施により公共の福祉が害されることはないとした認定は、土地調整委員会設置法第五二条にいわゆる実質的証拠に基づくものとはいえない。
一 土地調整委員会が鉱業権設定許可の当否を判断するについて許可後の鉱業監督的措置を期待することの可否 二 鉱業権の実施が公共の福祉を害しないとした土地調整委員会の認定が、実質的証拠に基づかないものとされた事例
鉱業法(昭和28年7月法律57号による改正前)35条,土地調整委員会設置法52条,土地調整委員会設置法54条
判旨
鉱業法35条の許可判断において、将来の監督権行使や代替施設の可能性を理由に、現存する水源破壊等の公共の福祉に反する具体的恐れを軽視することは許されない。裁決が実質的証拠に基づかない場合は、土地調整委員会設置法(当時)に基づき、裁判所は当該裁定を取り消すべきである。
問題の所在(論点)
鉱業権設定の許可要件(鉱業法35条:公共の福祉に反しないこと)の判断において、将来の不確実な監督権行使や代替施設の可能性を根拠に、現存する具体的損害の恐れを排斥できるか。また、専門的行政機関の裁定が「実質的証拠」に基づくといえるか。
規範
鉱業法35条に基づく許可の成否は、鉱業の実施により得られる公利と、失われる一般公益等の諸事情を総合判断すべきである。許可時に公共の福祉に反する恐れが予見できる場合、将来の行政庁による監督権発動を期待して安易に許可を与えることは許されず、当該恐れを具体的に防止できることを論証するか、一部区域を除外する等の万全の措置を講じる必要がある。
事件番号: 昭和44(行ツ)15 / 裁判年月日: 昭和49年4月25日 / 結論: 破棄自判
土地所有者が、鉱業法施行法七条一項の通知を受け、その後三〇日以内に追加鉱物を目的とする鉱業権の設定の出願をした場合であっても、右所有者が自作農創設特別措置法四一条による売渡によつて右土地の所有権を取得した者であり、その出願が鉱業法(昭和二五年法律第二八九号)施行後五年余も経過したのちにされたものである等、判示の事情(判…
重要事実
上告委員会(現:土地調整委員会に相当)は、鉱区内の水源が部落住民の唯一の水源であることを認めつつ、将来の掘採計画や鉱業監督上の行政措置等によって影響を防止可能であり、かつ代替水源の確保も技術的に可能であるとして、被上告人の異議を斥け、鉱業権設定を認める裁定をした。
あてはめ
本件水源が住民唯一の飲料水源である以上、その破壊の恐れは重大な公益侵害である。上告委員会が挙げた「監督権の発動」は行政庁の自発的職務に過ぎず、被害者がその発動を訴求する手段も乏しいため、抽象的な期待に留まる。また、代替施設についても経済・技術上の困難が予想され、確実に給水が得られる確証(実質的証拠)が欠如している。したがって、具体的事実に基づかず一般論で切実な公益侵害を排斥した裁定は、同条の法意に反し、実質的証拠に基づかない違法なものである。
結論
将来の監督権行使等を前提に公益侵害を容認した上告委員会の裁定は違法であり、これを取り消した原判決は正当である。上告を棄却する。
実務上の射程
行政庁の専門的裁量を尊重しつつも、具体的かつ切実な権利・利益侵害の恐れがある場合には、将来の不確実な行政措置を理由とする正当化を否定し、裁判所による「実質的証拠」の厳格な審査を求める枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和28(オ)405 / 裁判年月日: 昭和31年3月14日 / 結論: 棄却
一 地主が小作地の一部を小作人に売渡すことを約し、小作地の他の部分について知事の賃貸借解約許可を得て合意によつて解約した後、地主が売渡を約した農地について売渡の手続もなさず、小作人の耕作をも認めず返還を要求したような場合は、右解約農地について、昭和二二年法律第二四〇号農地調整法の一部を改正する法律附則第三条によつて、農…
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。