下級審に差し出された訴訟書類の正本に貼用された印紙に不足があつた場合に、これを上級審において追貼すれば、その瑕疵は補正されその書類は始めに遡つて有効となるものと解すべきである。
上級審における印紙の追貼とその訴訟書類の効力
民訴法228条,民事訴訟用印紙法11条
判旨
下級審に提出された訴訟書類の貼用印紙に不足があった場合でも、上級審において不足分を追貼すれば、当該書類の瑕疵は補正され、提出時に遡って有効となる。
問題の所在(論点)
下級審に提出された訴訟書類(請求の趣旨変更申立書等)に貼用された印紙に不足があった場合、上級審において印紙を追貼することで、その瑕疵を補正し、提出時に遡って有効とすることができるか。
規範
訴訟書類に貼用すべき印紙の不足は、その後の追貼によって補正することが可能であり、補正がなされた場合には、当該訴訟書類は当初の提出時に遡って有効なものとして取り扱うのが相当である。
重要事実
被上告人は原審(控訴審)において、複数回にわたり「請求ノ趣旨変更ノ申立」と題する書面を提出したが、これらに貼用すべき印紙に不足があった。その後、事件が上告審に係属した後、被上告人は当該不足額に相当する印紙を上告裁判所において追貼した。これに対し上告人は、原審での書面提出は無効であり、その後の追貼による補正も認められないと主張して上告した。
あてはめ
本件において、被上告人が原審で提出した各請求趣旨変更申立書には印紙の不足があったが、記録によれば、当審(上告審)においてその不足額が追貼されたことが明白である。印紙の貼用は手数料の納付という実務的・手続的な要件であり、後日の追貼によっても国家の徴収権は確保される。したがって、追貼により手続上の不備は解消されたといえ、右書面は提出当時の昭和25年から29年の各時点に遡って有効なものと解される。上告人の無効主張は採用できない。
結論
上級審での印紙の追貼により、下級審における訴訟書類の瑕疵は補正され、提出時に遡って有効となるため、上告を棄却する。
実務上の射程
訴訟費用の納付不備という形式的事項については、審級をまたいでも後納(追貼)による補正を広く認める判例である。答案上は、訴訟要件や手続的有効性が問題となる場面で、手続の無益な反復を避け訴訟経済を図る趣旨から、瑕疵の治癒や補正の遡及効を肯定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)1034 / 裁判年月日: 昭和38年5月31日 / 結論: 棄却
数個の証拠を総合して事実を認定した場合に、右証拠のうちに認定事実と矛盾するものがあつても、残余の証拠によつて右事実が認定できる以上は、右違法は民訴第三九四条にいわゆる判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背にあたらない。
事件番号: 昭和35(オ)1193 / 裁判年月日: 昭和38年6月4日 / 結論: 棄却
一 甲を被告としてA建物の一部につき使用貸借の終了を原因とする明渡請求をするとともに、乙を共同被告としてA建物の右以外の部分およびB建物などの不法占拠を理由とする明渡請求をする訴の係属中に、乙が退去し、事後甲が乙の占拠していた右部分およびB建物などを占有するに至つた場合、A建物全部とB建物などにつきいずれも所有権に基づ…
事件番号: 昭和32(オ)899 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
民訴第六三条により裁判所書記官がなす交付送達およびその送達証書の作成は、事実上補助機関たる雇を用いてこれをしても妨げない