境界確定の訴において、当事者が相隣地の所有者であることについて争がない以上、たとえ被告が口頭弁論終結前その所有地を他に譲渡しその所有権移転登記を了したとしても、裁判所が当事者についての要件に欠けるところなしとして判決しても違法でない。
境界確定の訴の当事者が相隣地の所有者であることが争のない場合において事実上相隣地の所有者でない者を当事者としてなされた判決の適否
民訴法45条
判旨
土地境界確定訴訟において、当事者間に相隣地の所有関係があることが口頭弁論終結まで争われなかった場合、裁判所が当該要件を具備するものとして審理判断することは適法である。
問題の所在(論点)
境界確定訴訟において、訴訟の前提となる相隣地の所有関係が口頭弁論終結前に失われていた場合、その事実が主張されず当事者間に争いがなければ、裁判所は訴訟要件を具備するものとして判断できるか。
規範
境界確定訴訟の要件(相隣地の所有関係等)について、原審の口頭弁論終結に至るまで当事者間に争いがなく、かつ、その欠缺を基礎付ける主張もなされていない場合には、裁判所は当該要件が具備されているものとして審理判断を行うことができる。
重要事実
上告人等は、被上告人等を隣接地(山林)の所有者として境界確定の訴えを提起した。しかし、被上告人等は原審の口頭弁論終結前に当該山林を第三者(訴外神社)に譲渡し、所有権移転登記も完了していた。上告人等は、原審においてこの所有権移転の事実を主張せず、相隣関係があることは当事者間に争いがなかったが、上告審に至って、相隣地の所有者関係が欠如しており訴訟要件を欠くと主張した。
あてはめ
本件において、上告人等が主張する「被上告人による第三者への山林譲渡」という事実は、原審において一切主張されていなかった。また、当該山林が被上告人の所有に属し、上告人の所有地と相隣関係にある事実は、原審の口頭弁論終結に至るまで当事者間に争いがなかった。このような訴訟状況においては、裁判所が相隣関係の要件に欠けるところがないとして審理し、判決を下すことに違法はないと解される。
結論
境界確定訴訟の要件について当事者間に争いがない場合、裁判所がそれを前提に審理判断することは正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
境界確定訴訟における当事者適格や相隣関係の存否は職権調査事項に近い性質を有するが、当事者間に争いがない事実関係を前提として審理を進める実務慣行を肯定したものである。答案上は、訴訟要件や当事者適格の判断において、主張立証がなされていない事実に基づき後から適格性を争うことの制限を論じる際に参照しうる。
事件番号: 昭和35(オ)1315 / 裁判年月日: 昭和38年2月26日 / 結論: 棄却
登記名義は被告の弟名義となつており、真実の所有者が被告であるとの認定もない山林については、被告は法律上何らの利害関係をも有しないから、被告が原告の右所有権を争うからといつて、それにより原告として不利益をこうむるものとは認め難く、原告が被告に対し右山林の所有権確認を求める訴は利益を欠くものと判断するのが正当である。