巡査が、もつぱら自己の利をはかる目的で、制服着用の上、警察官の職務執行をよそおい、被害者に対し不審尋問の上、犯罪の証拠物名義でその所持品を預り、しかも連行の途中、これを不法に領得するため所持の拳銃で同人を射殺したときは、国家賠償法第一条にいう、公務員がその職務を行うについて違法に他人に損害を加えた場合にあたるものと解すべきである。
国家賠償法第一条にいう公務員が職務を行うについて違法に他人に損害を加えた場合にあたるものとされた事例。
国家賠償法1条
判旨
国家賠償法1条1項にいう「職務を行うについて」とは、公務員が主観的に権限行使の意思をもってする場合に限らず、自己の利を図る意図であっても客観的に職務執行の外形を具備する行為であればこれに該当する。
問題の所在(論点)
公務員が専ら私利私欲を図る目的で、職権を濫用して他人に損害を加えた場合、その行為は国家賠償法1条1項の「職務を行うについて」なされたものといえるか。公務員の主観的な意図が職務執行に欠ける場合の同条の適用範囲が問題となる。
規範
国家賠償法1条1項の「職務を行うについて」とは、公務員が主権的に権限行使の意思をもって行う場合に限られない。たとえその所為が自己の利を図る意図目的であったとしても、行為の客観的外形から見て、職務執行の範囲に属すると認められるものであれば足りる(外形標準説)。これは、広く国民の権益を擁護するという同法の立法趣旨に基づくものである。
重要事実
巡査Dが、もっぱら自己の利益を図る目的で警察官の職務を装い、被害者に対して不審尋問を行った。その際、犯罪の証拠物という名目で被害者の所持品を預かり、さらに連行の途中でこれらを不法に領得しようと考え、所持していた拳銃で被害者を射殺して目的を遂げた。
あてはめ
本件において、巡査Dの行為は、不審尋問や証拠物の預かりという警察官としての職務を装って行われている。主観的には「自己の利をはかる目的」や「職権濫用の意図」があったとしても、不審尋問や連行という行為の形態そのものは、客観的外形において警察官の職務執行の範囲内にあると認められる。したがって、かかる外形を備えた一連の行為により被害者を射殺したことは、同条にいう「職務を行うについて」なされたものと評価できる。
結論
巡査Dの行為は国家賠償法1条1項の「職務を行うについて」に該当し、国は賠償責任を負う。
実務上の射程
本判決は外形標準説を確立したリーディングケースであり、公務員の行為が職務専念義務違反や犯罪行為であっても、客観的に職務の範囲内と見えれば国賠法が適用されることを示した。答案上は、公務員の主観(意図・目的)と客観(外形的・客観的な職務関連性)を区別し、後者を重視して「職務を行うについて」を肯定する論法として活用する。
事件番号: 昭和34(オ)1054 / 裁判年月日: 昭和36年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】司法警察職員による逮捕状の請求および逮捕が、客観的に犯罪の嫌疑を疑うに足りる相当な理由がある資料に基づいて行われた場合には、国家賠償法上の故意または過失があったと認めることはできない。 第1 事案の概要:上告人は、放火の容疑で司法警察職員によって逮捕された。上告人は、当該逮捕が不当であるとして国家…