一 未墾地の附帯地の買収が必要な範囲を超過してもその超過の範囲が著しく過大でない限り買収処分は無効ではない。 二 未墾地の買収計画に関する訴願裁決書の謄本が訴願人に到達していなくても、訴願棄却の裁決が成立している以上、買収処分は無効ではない。
一 未墾地の必要以上の附帯地の買収処分の効力 二 未墾地の買収計画に関する訴願裁決書の謄本の不到達と買収処分の効力
自作農創設特別措置法30条1項7号,自作農創設特別措置法30条1項8号,自作農創設特別措置法31条1項,自作農創設特別措置法31条5項,自作農創設特別措置法7条,自作農創設特別措置法9条,同法施行規則4条2項
判旨
行政処分における面積の過大等の瑕疵が、当該処分の根拠法規の趣旨に照らして直ちに重大なものとは認められない場合には、当該処分を当然無効と解することはできない。附帯地の買収面積が必要な範囲を超えていても、その程度が著しくなければ公定力は否定されない。
問題の所在(論点)
農地法上の附帯地買収処分において、必要面積を超過して買収したという瑕疵が、当該処分を当然無効(権利濫用)とするほどの重大な瑕疵にあたるか。
規範
行政処分に瑕疵がある場合、その瑕疵が重大かつ明白であるときに限り、当該処分は当然無効となる。自作農創設特別措置法30条に基づく買収処分において、必要とされる面積を超過して土地を買収した瑕疵がある場合でも、その超過の程度が同法の目的や裁量権の範囲に照らして著しく重大なものと認められない限り、権利濫用として当然無効になるものではない。
重要事実
知事は、自創法30条1項に基づき、約256町の開墾地等に対する附帯地(薪炭林・採草地)として、上告人所有の土地約132町を買収した。原審の認定によれば、標準的な経営に必要な附帯地面積は開墾地の5割8分(約148町)であり、既存の附帯地を除けば約85町の買収で足りる状況であった。すなわち、実際には必要面積を約47町超過して買収が行われていた。上告人は、この買収は不要な土地を含むものであり、同条の濫用として当然無効であると主張して争った。
事件番号: 昭和26(オ)251 / 裁判年月日: 昭和32年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】既墾地を未墾地と誤認して行った農地買収計画等の行政処分は、その瑕疵が重大かつ明白である場合には当然無効となる。 第1 事案の概要:本件土地は、昭和22年6月の農地買収計画樹立時において、既に開墾が完了していた。具体的には、一方の土地には陸稲が植え付けられ、他方の土地には馬鈴薯や大豆等が蒔き付けられ…
あてはめ
本件において、附帯地として必要な面積は約85町であったのに対し、実際には約132町(一部無効分を除いても約118町)が買収されており、客観的に見て必要以上の面積を買収した違法がある。しかし、附帯地の必要性の判断には農地委員会の合理的な裁量の余地があり、本件における超過の程度(必要面積の1.5倍程度)は、自創法30条の趣旨を根本から逸脱するほど著しく重大なものとは認められない。また、奥地林経営への打撃や境界の不明確さといった点も、処分を当然無効ならしめる事由とはいえない。
結論
本件買収処分には面積過大の違法があるものの、その瑕疵は重大とはいえず、当然無効とは認められない。したがって上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の取消事由と無効事由の区別に関する重要判例である。特に「過大部分の切り分け」が可能であっても、全体として重大な瑕疵に至らない限りは公定力を維持する実務の硬直的な態度を示している。答案上は、裁量権の逸脱・濫用が「重大かつ明白」な瑕疵に至るかどうかの検討において、本判決の「程度の問題」という視点を活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)1389 / 裁判年月日: 昭和38年11月1日 / 結論: 棄却
一 農地買収処分の前提としての調査が十分になされたかどうかは、当該処分の有効無効に関係しない(昭和三六年三月七日第三小法廷判決、民集一五巻三号三八一頁)。 二 共有にかかる農地を単独所有であるとして為した買収処分の違法は、その誤認が原審判示のように無理からぬ事情のもとでなされた以上、重大かつ明白な瑕疵ということはできず…
事件番号: 昭和29(オ)767 / 裁判年月日: 昭和31年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に相手方の誤認や手続上の瑕疵がある場合でも、処分の存在を認識し得た者が不服申立期間を徒過したときは、その瑕疵が当然無効と解すべき重大かつ明白なものでない限り、処分の効力は確定する。 第1 事案の概要:上告人の亡母Dの所有であった農地を、Dの死亡により上告人が相続したが、登記簿上の名義はDの…
事件番号: 昭和38(オ)708 / 裁判年月日: 昭和39年11月26日 / 結論: 棄却
対象たる土地の実測面積が一町一畝二六歩あるのを一町歩として行つた未墾地買収処分を、無効ということはできない。
事件番号: 昭和30(オ)419 / 裁判年月日: 昭和32年11月1日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法第二条第二項にいう「耕作の業務を営む者」とは、耕作経営の主体を指すものであつて、その耕作の規模が零細であることまたは農業以外に兼業を有することを妨げない。 二 買収令書に、買収目的地の表示として、一筆の土地の一部を単に地積を表示して掲げているに過ぎない場合においても、買収手続当時の事情の下で、一…