一 候補者が違法な選挙運動を行つても、そのために刑に処せられない以上その者の当選が無効となるものではない。 二 候補者推薦届人が後に選挙管理委員会となり、右候補者の当選の効力に関する異議決定に参与することは違法ではない。
一 候補者の違法な選挙運動と当選の効力 二 候補者推薦届出人が選挙管理委員会として右候補者の当選の効力に関する異議決定に参与することの適否
公職選挙法251条,公職選挙法206条,地方自治法189条
判旨
立候補推薦届書が法定期間前に作成されたことや一部の推薦が無効であることは当然には推薦を無効とせず、また立候補推薦人が後に選挙管理委員として異議決定に関与しても除斥事由には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 立候補推薦届書の事前作成は推薦の効力を否定する事由になるか。 2. 推薦人の一部に無効がある場合、推薦届全体の効力はどうなるか。 3. 候補者の推薦人であった者が選挙管理委員として当選異議の決定に関与することは、地方自治法189条2項の除斥事由に該当するか。
規範
1. 公職選挙法86条の期間制限は届書の提出期間を定めたものであり、作成時期を制限するものではない。 2. 複数の推薦人がいる場合、一部の推薦に瑕疵があっても他の推薦が有効であれば、推薦届全体は有効である。 3. 地方自治法189条2項の除斥事由は限定的に解すべきであり、候補者の推薦人であった事実は同条の除斥事由には該当しない。
重要事実
上告人は当選人Dの当選無効を主張した。その理由は、①立候補推薦届書が公職選挙法86条所定の期間前に作成されたこと、②推薦人11名のうち1名の推薦が無効であること、③立候補推薦人の一人が後に選挙管理委員となり、当該候補者の当選に関する異議決定に関与したこと、であった。
事件番号: 昭和30(オ)541 / 裁判年月日: 昭和30年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当選の効力を争う訴訟において、選挙無効の事由を請求原因として主張することは本来許されないが、原審が事実上の判断を示している場合には、直ちに判決に影響を及ぼす法令違背とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、当選の効力を争う訴訟(当選無効訴訟)を提起したが、その中で選挙自体の無効事由を請求原因とし…
あてはめ
1. 公選法86条1項・2項は提出期間の規定であり、作成期間を規制しないため、事前作成は適法である。 2. 本件では推薦人11名のうち1名の推薦に瑕疵の疑いがあるが、残りの推薦人が有効である以上、推薦全体を無効とする理由にはならない。 3. 選挙管理委員の除斥事由(地方自治法189条2項)は法に規定された事項に限られる。推薦人であった事実はこれに含まれないため、関与した決定は違法ではない。 4. 選挙違反(事前運動)の主張についても、当選人が刑に処せられない限り、当然に当選無効とはならない(公選法251条参照)。
結論
本件各事由はいずれも推薦の効力や当選の有効性に影響を及ぼさない。したがって、当選無効を求める上告は棄却される。
実務上の射程
選挙手続の形式的瑕疵が当選の効力に及ぼす影響を限定的に解釈する際や、行政委員の除斥事由の限定解釈を論じる際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)740 / 裁判年月日: 昭和32年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙人が候補者の氏名を誤記した場合であっても、候補者の姓と名の混記ではなく、単なる誤記と認められるときは有効投票として扱うべきである。また、不在者投票や代理投票に一部違法があっても、直ちに選挙全体の無効や当選無効の原因とはならない。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、当選人田中Cの得票の有…
事件番号: 昭和36(オ)560 / 裁判年月日: 昭和36年10月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票箱の一部に施錠不能な破損があっても、内蓋の施錠や封印、保管状況等から不正混入の虞が否定される限り、選挙結果に影響を及ぼす事由には当たらない。また、同一筆跡と疑われる投票の存在のみでは、直ちに組織的な不正投票の事実を認定することはできない。 第1 事案の概要:村長選挙等の効力が争われた事案。投票…
事件番号: 昭和32(オ)708 / 裁判年月日: 昭和32年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙手続に法令違反がある場合であっても、それが選挙の結果に異動を及ぼすおそれがないときには、当該選挙は無効とはならない。投票箱の空虚確認漏れ等の手続上の瑕疵は、実質的に公正が担保されていれば選挙無効の原因を構成しない。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、複数の手続上の問題が指摘された。具体…