換地予定地指定の通知を受けた土地所有者は、従前の土地について賃借権を有する者として第三者に対してなされた換地予定地指定の通知の取消を求める法律上の利益を有する。
賃借権者に対する換地予定地指定の通知の取消を求める土地所有者の法律上の利益の有無
特別都市計画法13条,特別都市計画法14条,民訴法第2編第1章訴(223条の前)
判旨
土地所有者は、賃借権を有しない第三者を賃借人と誤認してなされた換地予定地の指定通知により、換地予定地における完全な所有権行使を妨げられる恐れがある場合、当該指定通知の取消しを求める訴えの利益を有する。
問題の所在(論点)
賃借権を有しない者を賃借人と誤認してなされた換地予定地の指定通知について、土地所有者がその取消しを求める訴えの利益(権利保護の利益)を有するか。
規範
行政処分によって、本来認められないはずの権利行使(建物の移築等)が第三者に認められ、その結果として権利者の正当な権利行使(完全な所有権の行使等)が妨げられる客観的な恐れが生じる場合には、処分によって直接利益を侵害される立場にあるといえ、処分の取消しを求める「法律上の利益」が認められる。
重要事実
上告人(土地所有者)の所有地に居住する訴外人らが、従前の土地に対し賃借権を有していないにもかかわらず、被上告人(行政庁)は、訴外人らが賃借権を有するとの前提で、訴外人らに対し換地予定地の指定通知を行った。この通知により、被上告人は訴外人らの建物を換地予定地へ移築することを命じ、または代執行することが可能となる状況にあった。
事件番号: 昭和32(オ)328 / 裁判年月日: 昭和33年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理事業における換地予定地の指定処分について、従前の土地と比較して位置や利用価値等が著しく劣等でなく、かつ特定の者に不利益を強いるものでない限り、当該処分は適法である。 第1 事案の概要:上告人は、土地区画整理事業に伴う換地予定地の指定処分を受けたが、当該換地予定地が従前の土地と比較して位…
あてはめ
被上告人の指定通知は、訴外人らが賃借権を有するとの誤った前提に基づいている。この通知の効力により、本来権利のない訴外人らが換地予定地を使用し、行政庁による移築命令や代執行が行われる可能性がある。これにより、土地所有者である上告人は換地予定地に対する完全な所有権の行使を妨げられる恐れがある。たとえ将来的に移築命令等の段階で争う手段があるとしても、その着手まで待たなければならない理由はないため、現時点で指定通知を争う必要性が認められる。
結論
上告人は、第三者に対する本件換地予定地の指定通知の取消しを求める法律上の利益を有する。
実務上の射程
第三者に対する行政処分であっても、その処分の前提事実の誤りによって自己の私法上の権利(所有権等)の完全な行使が侵害される法的地位にある者は、原告適格(訴えの利益)を有することを示す。土地区画整理事業における権利関係の誤認に基づく指定の違法を争う際のリーディングケースである。
事件番号: 昭和32(オ)920 / 裁判年月日: 昭和35年2月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理事業において、仮換地の指定変更を行うことは、使用収益関係の特定や事業の円滑な進行という公益上の必要性に基づくものであれば、私益の制限が受忍限度を超えない限り行政権の濫用には当たらない。同一人に対する仮換地を必ずしも一箇所にまとめる必要はなく、変更前後で実質的な不利益に差がない場合は適法…
事件番号: 昭和33(オ)952 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理事業の承継において、承継後の施行者が既になされた換地予定地の指定を前提に修正を加えることは適法であり、また、個別の地上建物の利用価値減少等の事情は減歩率の決定を左右しない。 第1 事案の概要:鳥取市が都市計画事業として施行していた旧駅前土地区画整理事業において、昭和16年に上告人所有地…
事件番号: 昭和32(オ)1178 / 裁判年月日: 昭和34年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理における換地予定地指定処分に関し、賃借権者に対する通知の欠缺や、換地予定地が飛地であるといった事情は、当該処分を法律上当然に無効とする事由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、従前の土地の一部に保存登記のある建物を所有し、賃借権を有していた。特別都市計画法に基づく土地区画整理に…
事件番号: 昭和31(オ)806 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
特別都市計画法にいよる換地予定地指定の取消を求める訴は、本換地のなされるまで何時でも提起できる合のではなく、行政事件訴訟特例法第五条の制約を受けるものと解すべきである。