一 高等裁判所が上告審としてなした判決に対する再審事件について、同裁判所が言い渡す判決は、上告審たる資格でなすものであり、右再審事件の終局判決に対する上訴としては、民訴第四〇九条ノ二第一項の特別上告のみが許される。 二 建物の賃貸借が、国税徴収法に基く滞納処分による差押登記の後になされたものであるときは、賃借人が建物の引渡を受けていても、その賃貸借を以て、公売処分により建物の所有権を取得した者に対抗することはできない。
一 高等裁判所が上告審としてなした判決に対する再審と右再審事件の判決に対する上訴の許否 二 滞納処分による差押登記の後になされた建物の賃貸借と借家法第一条
民訴法423条,民訴法40条ノ2第1項,借家法1条
判旨
滞納処分による建物の差押登記後になされた賃貸借は、公売処分による買受人に対抗できず、賃借人が建物の引渡しを受けていても借家法1条(現借地借家法31条)の適用はない。
問題の所在(論点)
滞納処分による差押登記後になされた建物賃貸借の賃借人は、建物の引渡しを受けている場合、公売処分による買受人に対して当該賃借権を対抗できるか(借地借家法31条1項の対抗力の有無)。
規範
滞納処分による建物の差押登記後、所有者に許される建物の利用・管理は、公売処分による徴収の目的を害しない範囲に限られる。したがって、差押登記後に成立し、公売処分後まで継続する賃貸借は、公売により建物の所有権を取得した者に対抗できず、引渡しがあっても借家法上の対抗力規定の適用は排除される。
重要事実
滞納者所有の建物につき、国税徴収法に基づく滞納処分として差押えがなされ、その登記が完了した。その後、建物所有者(滞納者)は上告人Aとの間で建物の賃貸借契約を締結し、Aは建物の引渡しを受けた。その後、建物は公売処分に付され、被上告人がその所有権を取得したため、Aが賃借権を対抗できるかが争われた。
あてはめ
本件建物の差押登記は、上告人Aと滞納者との間の賃貸借契約よりも前になされている。差押えの効力により、所有者の処分権は徴収の目的を害する範囲で制限される。公売処分後も継続する賃貸借を認めることは、買受人の所有権取得を阻害し、徴収の目的を害するものである。よって、たとえ引渡しという対抗要件を備えていても、先行する差押登記には優先できず、借家法による保護の対象外となる。
結論
差押登記後になされた賃貸借は、公売処分による所有権取得者に対抗できない。上告人Aの主張は排斥される。
実務上の射程
抵当権設定登記後の賃貸借(抵当権者に対抗できないもの)と同様の理屈を、滞納処分(差押登記)後の賃貸借にも適用した。民事執行法上の差押えにおいても同様に解され、買受人(最高価買受申出人)に対する対抗力を否定する際の強力な論拠となる。
事件番号: 昭和52(オ)1111 / 裁判年月日: 昭和53年6月29日 / 結論: 破棄差戻
賃貸中の不動産に対する競売開始決定の差押の効力発生後賃貸人のした賃借権譲渡の承諾は、特段の事情のない限り、右差押の効力によつて禁止される処分行為にあたらず、譲受人は、賃借権の取得をもつて競落人に対抗することができる。