一 民法第八九五条の規定は、受遺者が、相続人廃除の手続進行中、相続人から遺贈の目的物を譲り受けた第三者に対し、右目的物につき仮処分を申請することを妨げるものではない。 二 民法第一〇一二条の規定は、受遺者が自ら遺贈の目的物につき仮処分を申請することを妨げるものではない。 三 禁治産者でない通常人が民法第九七六条による遺言をなす場合には、医師二人以上の立会その他同法第九七三条所定の方式を必要とするものではない。
一 民法第八九五条と遺贈の目的物についての受遺者の仮処分申請の許否 二 民法第一〇一二条と遺贈の目的物についての受遺者の仮処分申請の許否 三 民法第九七六条による遺言と医師の立会等の要否
民法895条,民法1012条,民法976条,民法982条,民法973条,民訴法755条
判旨
遺言の解釈は、遺言者の真意を合理的に探究し、できる限り適法有効なものとして解釈すべきであり、受遺者は自己の権利保全のため、相続人廃除が確定する前であっても仮処分の申請が可能である。
問題の所在(論点)
1. 遺言の文言が不明確な場合、遺言の有効性をどのように解釈すべきか。 2. 相続人廃除の審判が確定していない段階で、受遺者は権利保全のための仮処分を申請できるか。 3. 遺言執行者が存在する場合、受遺者自身による権利行使が妨げられるか。
規範
意思表示の解釈にあたっては、当事者の真意を合理的に探究し、できる限り適法有効なものとして解釈すべきである。この原則は遺言の解釈にも妥当し、遺言書の文言が不明確な場合であっても、真意を探究してその趣旨を画定すべきである。
重要事実
遺言者Aは「後相続はBにさせるつもりなり」「一切の財産はBにゆずる」とする一方、養女Dに対し「後を継す事は出来ないから離縁をしたい」との文言を含む遺言書を作成した。B(被上告人)は、本件建物の所有権取得を主張して仮処分を申請した。これに対し、Aの相続人から建物を買い受けた第三者である上告人は、遺言の文言が不明確で無効であること、相続人廃除が未確定であること、遺言執行者がいるため受遺者自らの申請は許されないこと等を理由に争った。
あてはめ
1. 本件遺言の「後相続はBにさせる」等はBへの遺贈、「離縁をしたい」等は相続人廃除の趣旨と合理的に解釈可能であり、有効である。 2. 仮処分は本案確定前の保全を目的とするため、廃除の審判や遺贈の効力が係争中であっても、権利取得を主張する受遺者による申請は許される。民法895条の家庭裁判所の権限は、受遺者による民事保全の申請を妨げるものではない。 3. 遺言執行者が民法1012条1項の権限を有していても、受遺者自身が権利に基づいて仮処分を申請することは妨げられない。また、遺言執行者が受遺者の代理人として行動することも、遺言者の真意実現という任務に照らし許容される。
結論
遺言は有効であり、受遺者である被上告人は、相続人廃除の確定前であっても自ら(または遺言執行者を介して)本件建物について仮処分を申請することができる。
実務上の射程
遺言解釈における「有効解釈の原則」を示す重要な指針となる。答案上は、遺言の文言から直ちに無効と判断せず、諸般の事情から真意を探る姿勢を示す際の根拠として活用できる。また、廃除や遺贈の効力が未確定な段階での保全処分の可否についても実務上の射程を持つ。
事件番号: 昭和25(オ)30 / 裁判年月日: 昭和27年5月6日 / 結論: 破棄差戻
一 占有の訴を本案とする仮処分申請の当否については、専ら占有関係によつてのみ判断すべきであつて、本権の理由(特別都市計画法第一四条による換地予定地を使用収益し得る権原)によることを得ない。 二 換地予定地の指定があつても、従来の事実上の占有状態に変更のないかぎり、当然には、その土地の占有権に変動移転を生ずるものではない…