仮処分により保全すべき請求が、所有権に基く不動産の引渡及び虚偽譲渡を理由とする右不動産の所有権移転登記の抹消を求めるものであり、起訴命令に基いて提起された本案訴訟における請求が、右譲渡行為を詐害行為として同様右登記の抹消を求めるものであるときは、両者は、請求の基礎において同一性がある。
仮処分により保全すべき請求と本案訴訟の請求とがその基礎において同一性のある一事例
民訴法746条
判旨
仮処分の保全取消における「事情の変更」の存否は裁判所の裁量に属し、本案第一審で敗訴しても上訴により取り消される可能性があれば直ちに事情変更には当たらない。また、通謀虚偽表示の無効は第三者も主張可能であり、起訴命令に基づく本案訴訟と仮処分の被保全権利との間に請求の基礎の同一性があれば適法な本案提起といえる。
問題の所在(論点)
1.本案第一審での敗訴判決がある場合、民事保全法上の「事情の変更」に該当するか。2.仮処分申請時の被保全権利(所有権等)と本案訴訟(詐害行為取消)との間に請求の基礎の同一性が認められるか。3.第三者が通謀虚偽表示による無効を主張できるか。
規範
1.民事保全法上の保全取消事由である「事情の変更」に該当するか否かは、裁判所が諸般の事情を考慮して決定すべき事項である。2.仮処分の被保全権利と本案訴訟の請求との間に「請求の基礎の同一性」が認められる場合には、当該訴訟は適法な本案の提起といえる。3.民法94条1項の通謀虚偽表示による無効は、当事者以外の第三者も主張することが可能であり、これは民法177条の趣旨に反するものではない。
重要事実
債権者(被上告人)は、不動産の所有権に基づき、債務者A2に対し移転登記の抹消等を求めて仮処分を申請した。その後、起訴命令に基づき債務者に対し詐害行為取消訴訟を提起し、同様に抹消登記等を求めた。一方、債務者A1に対する本案訴訟では、第一審において所有権に基づく登記請求等が棄却され、予備的請求である損害賠償請求のみが認容された。債務者側は、本案敗訴等を理由に「事情の変更」による仮処分取消を求めて上告した。
あてはめ
1.本案第一審で登記請求等が棄却された事実はあるが、口頭弁論終結時において控訴の提起がなくとも、上訴審で判決が取り消される可能性が否定できない以上、直ちに事情の変更があったとはいえない。2.仮処分の請求(所有権に基づく抹消登記等)と、本案の詐害行為取消に基づく請求は、いずれも登記の抹消を目的とするものであり、請求の基礎において同一性が認められる。3.本件不動産贈与契約が通謀虚偽表示であるとの主張は、第三者である被上告人も民法94条1項に基づき主張可能であり、外形的事実から虚偽事実も疎明されている。
結論
本件仮処分の取消事由としての事情変更は認められず、また本案訴訟の提起も適法である。さらに第三者による虚偽表示の主張も認められるため、上告を棄却する。
実務上の射程
保全取消における「事情の変更」の判断枠組みを示すとともに、仮処分の被保全権利と本案の厳密な一致を要さず「請求の基礎の同一性」があれば足りる点を確認した実務上重要な判例である。また、94条1項の無効主張の主体が当事者に限られないことも明示しており、登記をめぐる紛争において引用価値がある。
事件番号: 昭和23(オ)35 / 裁判年月日: 昭和23年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事保全法上の特別の事情による仮処分取消において、債権者が金銭賠償のみでは目的を達し得ない特段の事情があり、かつ債務者に異常な損害が生じる恐れがない場合には、「特別の事情」を否定すべきである。 第1 事案の概要:債権者は、支店として自ら使用する目的で本件土地建物を買い受け、仮処分命令を得ていた。こ…