一 債権者が数人の債務者に対して金銭債務の履行を訴求するにあたり、これを連帯債務と主張しなかつたため分割債務として確定判決をえたときは、その後別訴において右債権を連帯債務である旨主張することは、前訴判決の既判力に牴触し、許されないものと解すべきである。 二 ある金額の支払を訴訟物の全部として訴求し勝訴の確定判決をえた後、別訴において、右請求をその訴訟物の一部である旨主張しその残額を訴求することは、許されないものと解すべきである。
一 連帯債務として主張しなかつた債務の履行を求める前訴の判決確定後の後訴において連帯債務である旨主張することの許否 二 ある金額を訴訟物の全部として訴求し勝訴の確定判決をえた場合における残額請求の許否
民訴法199条,民法427条,民法432条
判旨
金銭債務の履行を訴求する際、連帯債務の事実を主張しない場合は分割債務の主張と解される。分割債務を主張して確定判決を得た後、同一の債権関係につき連帯債務であると主張して別訴を提起することは既判力に抵触し許されない。
問題の所在(論点)
数人の債務者に対して分割債務として全額の支払を求め、認容判決が確定した後に、同一の債権が実は連帯債務であったとして残余の支払を求める訴えが、前訴の既判力に抵触するか。
規範
1. 可分給付たる金銭債務の債務者が数人ある場合、債権者がその履行を訴求するにあたって連帯債務たる事実関係を主張しないときは、これを分割債務の主張と解すべきである。2. 分割債務を主張して一旦確定判決を得た以上、後に別訴をもって同一債権につき連帯債務である旨を主張することは、前訴判決の既判力(民事訴訟法114条1項)に抵触し、許されない。
重要事実
債権者(被上告人先代)は、骨董商ら2名(上告人ら)に対し、宝石の返還または損害金45万円の支払を求めて前訴を提起した。前訴において債権者は連帯債務の主張をせず、裁判所は分割債務(各自22万5000円)の支払を命じる判決を出し、これは確定した。その後、債権者は、上告人らの行為は商行為であり本来は連帯債務(45万円)であると主張。前訴は連帯債務の一部(22万5000円)を請求したに過ぎないとして、残余の22万5000円を連帯して支払うよう本訴を提起した。
あてはめ
債権者は前訴において、45万円の債権全額につき履行を求めたが、連帯債務である旨は主張していなかった。これを分割債務の主張と解すると、裁判所が命じた「各自22万5000円」の支払は、債権者が主張した訴訟物の全部に対する判断である。債権者は前訴において訴訟物の全部を訴求し勝訴判決を得ている以上、本訴において「前訴は一部請求に過ぎなかった」と主張することは、前訴の訴訟物(分割債務としての全額)に関する既判力の判断と矛盾する主張であり、許されない。
結論
本訴請求は前訴の確定判決の既判力に抵触するため、棄却されるべきである。
実務上の射程
明示の一部請求であれば既判力は及ばないのが原則(判例)だが、本判決は、前訴で全額請求(分割債務として)して勝訴した後に、実体法上の性質(連帯債務)を理由に残額を請求する構成は「一部請求」とは認められないことを示している。訴訟物の同一性を判断する際、債権の数的事実だけでなく、訴訟上の権利主張の態様(連帯か分割か)も既判力の範囲に影響を与える点に注意が必要である。
事件番号: 昭和35(オ)359 / 裁判年月日: 昭和37年8月10日 / 結論: 棄却
一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合に、右一部請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばない。