同一取引に関する民事、刑事両事件が、同時に、構成員の過半数を同じくする二裁判所に係属する場合において、一裁判所が先ず刑事事件について判決し、民事事件の当事者の一方が、右刑事判決の認定事実と異る相手方主張事実についての自白を取消し右認定に沿う事実を真実に合致するものと主張するとき、他の裁判所が右刑事判決言渡より約二月を経て弁論を終結した民事事件の判決において、右の自白が真実に反する証拠なしとしてその取消を否定するにつき、前記刑事判決において認定した事実を顧慮した形跡がないときは、審理不尽の違法がある。
審理不尽の違法がある一事例
民訴法395条6号
判旨
裁判所の構成員の過半数が同一である場合、先に言い渡された刑事判決で認定された事実は裁判所に顕著な事実に当たり、民事上の自白の撤回において「真実に反すること」を判断する際の資料としなければならない。
問題の所在(論点)
裁判上の自白の撤回要件である「自白が真実に反すること」の判断において、裁判官構成を同じくする先行刑事判決での認定事実は、民事訴訟法上の「裁判所に顕著な事実」として、証明を要さず判断資料に含めるべきか。
規範
裁判上の自白を撤回するには、その自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づいたものであることを要する。ここで、同一取引に関する刑事事件と民事事件が同一の裁判所に係属し、かつ構成員の過半数が同一である場合、先行する刑事判決の存在及びその理由中で一定の事実が認定されたことは、当該裁判所に「顕著な事実」に該当する。したがって、裁判所が自白の撤回の可否(真実反女性等)を判断するにあたっては、この顕著な事実を判断資料として用いなければならない。
重要事実
上告人A1らは、被上告人から「するめ」の製造を委託されたが、製品を引き渡さず他へ売却したとして不法行為に基づく損害賠償請求を受けた。A1は第一審で事実を認めたが、控訴審において、刑事事件(業務上横領被告事件)で「金銭での決済も許容される選択債務であり、不法領得の意思はない」として無罪判決が出たことを理由に、自白を撤回した。民事控訴審の裁判官構成は、上記刑事無罪判決を出した裁判所の構成員と過半数が同一であったが、原審(民事控訴審)は、自白が真実に反する証明がないとして撤回を認めなかった。
あてはめ
本件では、民事控訴審の構成員が刑事判決を下した裁判官と過半数が同一である。刑事判決では「製品または現金のいずれで決済してもよい」という契約内容が認定されており、これはA1が当初認めた「製品を引き渡す約定であった」という自白内容と矛盾する。このような先行刑事判決による認定事実は、同一構成員を擁する裁判所にとって「顕著な事実」である。原審がこの事実を考慮せずに「自白が真実に反することを認めるに足りる資料がない」とした点は、顕著な事実を証拠資料として判断すべき義務を怠ったか、あるいは審理不尽の違法があるといえる。
結論
自白の撤回を認めなかった原判決には、裁判所に顕著な事実の取扱いに関する法理の誤用または審理不尽の違法があるため、破棄を免れない。
実務上の射程
自白の撤回(民訴法179条の類推適用)における「真実反女性」の立証負担を軽減する法理として重要。特に、関連する刑事事件で有利な認定がなされている場合、裁判官の同一性を確認した上で「顕著な事実」としての援用を主張する際の根拠となる。
事件番号: 昭和39(オ)59 / 裁判年月日: 昭和41年12月20日 / 結論: 棄却
試掘権者との契約の相手方において探炭の結果石炭の産出が確認された場合には試掘権者より通商産業局に対し採掘権に転願したうえ相手方のために租鉱権を設定する旨の約定がなされた等原審認定の事実関係(引用の第一審判決理由参照)のもとにおいては、鉱業法第七条の違反があるものとは認められない。