一 一筆の土地全部の所有権移転登記手続を求める請求において、その土地の一部につき「分筆の上」所有権移転登記手続をなすべき旨の判決をしても、「申立テザル事項ニ付判決ヲ為シ」たことにはならない。 二 一筆の土地の一部といえども、売買の目的とすることをうべく、その部分が具体的に特定しているかぎりは、右部分につき分筆手続未了前においても、買主はその部分につき所有権を取得することができる。
一 「分筆の上」登記を命ずる判決と「申立テザル事項」 二 一筆の土地の一部の売買
民訴185条,民法176条,民法177条,民法206条,不動産登記法79条,不動産登記法46条ノ2
判旨
一筆の土地の一部であっても、当事者間で具体的に特定されている限り、分筆手続未了であっても売買の目的とすることができ、買主はその所有権を取得できる。
問題の所在(論点)
一筆の土地の一部を売買の目的とすることができるか。また、分筆手続がなされる前に当該一部の所有権を取得できるか。
規範
一筆の土地の一部を区分して売買の目的とすることは可能である。売買の目的物たる土地の一部が、当事者間において具体的に特定されている限り、分筆手続が完了する前であっても、買主は当該売買契約に基づき、その一部についての所有権を取得することができる。
重要事実
被上告人は、上告人に対し、係争宅地(55坪余)の全部について売買を原因とする所有権移転登記を請求した。原審は、そのうち被上告人所有の居宅の敷地部分(25坪余)について、当事者間に売買の目的物として特定されていると認定し、分筆の上で当該部分の移転登記を命ずる判決を言い渡した。これに対し上告人は、分筆未了の土地の一部について所有権移転を認めることはできない等と主張して上告した。
事件番号: 昭和49(オ)868 / 裁判年月日: 昭和51年8月30日 / 結論: 棄却
山林「a」の仮換地「A」について右仮換地自体に着目して売買契約が締結されたのち、仮換地の指定の変更により、山林「a」の一部である山林「a’」につき仮換地「A」と同一性のある仮換地「A’」が、山林「a」の残部である山林「b」につき仮換地「B」が、各指定され、次いで右仮換地がそのまま換地「A”」、換地「B’」と定められた場…
あてはめ
本件において、売買契約の目的とされた「土地の一部」は、被上告人が所有する居宅の敷地として利用されている部分であり、当事者間において客観的に他の部分と区別され、具体的に特定されているといえる。このように目的物が特定されている以上、私法上の権利変動を生じさせるに足りる状態にある。したがって、不動産登記法上の分筆手続という事務的処理が完了していないことは、実体法上の所有権移転を妨げる理由にはならないと解される。
結論
土地の一部が特定されている限り、分筆前であっても当該部分の所有権を取得できる。また、裁判所が分筆を条件に移転登記を命ずることは、申立ての範囲内として許容される。
実務上の射程
物権変動の対象を特定性(公示の便宜ではなく実体的な特定)に求める重要な判例である。答案上では、土地の一部譲渡における所有権移転の可否が問われた際、本判例を根拠に「特定されている限り可能」と論じる。なお、移転登記請求の認容にあたっては、判決主文において分筆手続を先行させる形(分筆登記手続をした上で移転登記手続をせよ)で命ずることになる。
事件番号: 昭和33(オ)27 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
従前の土地の一部を譲り受けた後、所有権移転登記未了の間に、特別都市計画法第一三条による換地予定地の指定があつたからといつて、その後右譲渡部分につき分筆並びに所有権移転登記手続を訴求すべき法律上の利益がないとはいえない。
事件番号: 昭和37(オ)393 / 裁判年月日: 昭和41年11月25日 / 結論: 棄却
売主所有の土地について指定された換地予定地の一部を目的物として売買契約が成立した場合において、その契約の成立にいたるまでの経緯および右目的物に関し原審が確定したような事情(原判決理由参照)があるときは、同契約に基づき買主の取得する当該土地所有権移転請求権については、いわゆる選択債権に関する民法の規定を類推適用すべきであ…
事件番号: 昭和33(オ)718 / 裁判年月日: 昭和36年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない契約条件(代金決済方法等)を認定して売買契約の効力を認めることは、当事者の主張・立証の範囲内であれば弁論主義に反しない。また、特定の買戻し合意や代金決済合意を含む売買契約であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は上告人(被…
事件番号: 昭和34(オ)343 / 裁判年月日: 昭和36年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理人として売買契約等の交渉に当たった者が、真の買受人であるか、それとも本人の代理人として行動したに過ぎないかは、証拠を総合して判断される事実認定の問題である。本判決は、交渉の衝に当たった事実があるからといって直ちにその者を真の権利者と認めることはできないとした。 第1 事案の概要:第一審参加人E…