借家法第五条による造作買取代金債権は、造作に関して生じた債権であつて、建物に関して生じた債権ではない。
借家法第五条による造作買取代金債権は建物に関して生じた債権か
借家法5条,民法295条
判旨
家屋の賃借人が賃貸人の承諾なく同居人(間借り人)を置くことは、民法612条に抵触する無断転貸に該当し、また造作買取代金債権を被担保債権として建物に留置権を行使することはできない。
問題の所在(論点)
1. 家屋の一部を他人に使用させる「間貸し」に賃貸人の承諾が必要か(民法612条の適用の有無)。 2. 造作買取代金債権を被担保債権として、建物自体に対して留置権(民法295条1項)を主張できるか。
規範
1. 家屋の賃貸借において、賃借人が一部に同居人を置く行為(間貸し)は、賃貸人の承諾を要する。承諾なき場合は民法612条が適用され、特段の事情がない限り解除事由となる。 2. 留置権(民法295条1項)における「その物に関して生じた債権」とは、目的物自体から発生した債権、あるいは返還義務と同一の法律関係等から発生した債権を指す。造作買取代金債権は造作に関して生じた債権であって、建物に関して生じた債権には当たらない。
重要事実
賃借人(上告人)は、賃貸人(被上告人)から賃料月額50円で家屋を借り受けていたが、賃貸人の承諾を得ることなく家屋の一部に同居人を住まわせた(間貸し)。これに対し賃貸人は無断転貸を理由に賃貸借契約を解除し、建物の明け渡しを求めた。賃借人側は、間貸しは借家権の利用方法として許容されるべきであり承諾は不要であると主張し、さらに造作買取代金債権に基づき建物に留置権を行使できると主張して、明け渡しを拒んだ。
あてはめ
1. 住宅難等の社会情勢を考慮しても、間貸しは賃借権の譲渡・転貸にあたり、賃貸人の承諾を不要とする解釈は採用できない。本件における承諾なき間貸しは解除事由を構成し、権利濫用(民法1条)にも当たらない。 2. 留置権の成否について、造作買取代金債権は建物に附随させた造作の対価として生じるものであり、建物そのものとの間に牽連性は認められない。したがって、建物返還請求に対する留置権の抗弁は成立しない。
結論
1. 間貸しには賃貸人の承諾が必要であり、無断で行われた場合は契約解除が認められる。 2. 造作買取代金債権に基づき建物に留置権を行使することはできないため、上告を棄却する。
実務上の射程
民法612条の無断転貸に関する基本判例であるとともに、留置権の「物に関して生じた債権(牽連性)」の具体的判断枠組みを示す重要判例。答案では、造作買取代金と建物明け渡し請求が並存する場合、牽連性を否定して留置権を否定する根拠として用いる。
事件番号: 昭和26(オ)767 / 裁判年月日: 昭和28年1月30日 / 結論: 棄却
一 後記(原判決理由参照)の事情にある間貸を民法第六一二条の転貸に外ならないものとしたのは、正当である。 二 後記(原判決理由参照)の無断間貸を理由として家屋全部の賃貸借を解除しても、権利の濫用とはいえない。