裁判上手形金の支払を請求する場合は、手形の呈示を伴わないでも、支払命令の送達により債務者を遅滞に付する効力を生ずる。
手形金請求の支払命令の送達と付遅滞の効力
手形法38条,商法517条,民法412条
判旨
裁判上手形金の支払を請求する場合、手形の呈示を伴わなくとも、訴状(支払命令)の送達によって債務者を履行遅滞に付する効力が生じる。
問題の所在(論点)
手形債務の履行遅滞に関し、裁判上の請求をするにあたって手形の呈示がない場合でも、訴状(支払命令)の送達によって遅滞の効力が生じるか。
規範
手形債務は取立債務であり、本来は手形の呈示が履行遅滞の要件となるが、裁判上の請求をする場合には、手形の呈示を欠いても訴状の送達により債務者は履行遅滞に陥る。
重要事実
上告人は本件手形の裏書譲渡等を不知と争っていたが、一方で期限後裏書であるとの主張も行っていた。第一審判決が裏書について当事者間に争いがない旨判示したことに対し、上告人は原審でも同様の陳述をし、弁論終結まで異議を述べなかった。また、手形の呈示がない状態での遅滞責任が争点となった。
あてはめ
手形金支払の裁判上の請求は、債権者が支払を求める確定的な意思表示を裁判所を通じて行うものである。この場合、実体法上の呈示を厳格に要求せずとも、訴状等の送達により債務者は支払義務の発生を認識し得る状態に置かれる。本件では支払命令送達の日の翌日から法定利息の支払を命じた原判決の判断は、従前の大審院以来の判例に照らして正当である。
結論
手形債務者は、手形の呈示がなくても訴状(または支払命令)の送達を受けた日の翌日から履行遅滞の責任を負う。
実務上の射程
手形法上の呈示(手形法38条、77条等)の原則に対する、裁判上の請求時における例外を認める射程を持つ。答案上は、手形債務の取立債務性を前提としつつ、遅滞利息の起算点を論じる際の根拠として活用する。また、訴訟上の自白や陳述の矛盾についても付随的に触れられているが、メインは履行遅滞の要件緩和である。
事件番号: 昭和30(オ)663 / 裁判年月日: 昭和32年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】約束手形債務の振出人が遅延損害金支払義務を負うためには、所持人が満期後に手形を呈示しなくても、裁判上の履行を求める訴状の送達があれば足りる。 第1 事案の概要:上告人は約束手形の振出人であり、被上告人はその手形所持人である。被上告人は、満期後に手形の呈示を行わないまま、上告人に対して約束手形債務の…