一 昭和二七年法律第三〇七号公職選挙法改正法附則第二項が右改正によつて新たに設けられた第二〇九条の二を現に裁判所に係属している事件に適用すべきものとしたのは憲法第三一条に違反しない。 二 書損を抹消して候補者氏名を記載した投票は無効ではない。 三 唯一の証拠方法であつても時機に後れて提出された場合はこれを却下しても違法でない。
一 昭和二七年法律第三〇七号公職選挙法改正法附則第二項の合憲性 二 書損を抹消して候補者氏名を記載した投票の効力 三 唯一の証拠方法と民訴第一三九条の適用
公職選挙法209条の2,公職選挙法68条1項本文5号,昭和27年法律307号(公職選挙法の一部を改正する法律)附則2項,民訴法139条,民訴法259条
判旨
投票用紙の裏面に記載された氏名を一本線で抹消し、表面に候補者名を記載した投票は、書損した文字を抹消したものにすぎず、他事記載による無効投票(公職選挙法68条1項5号)には当たらない。
問題の所在(論点)
投票用紙の裏面に他人の氏名を記載し、これを抹消した上で表面に候補者名を記載した投票が、公職選挙法68条1項5号(現行法。当時は旧法下)の禁止する「他事記載」として無効になるか。
規範
公職選挙法における他事記載による無効の規定は、投票の秘密を保持し、不正な記号等による識別を防止する趣旨である。単なる書損を抹消したと認められる記載は、特定の候補者を選択する意思を外部から補足するものであっても、意識的な「他事」の記載には当たらない。
重要事実
上告人が提起した当選無効訴訟において、ある投票(検甲第257号)の有効性が争点となった。当該投票は、表面に候補者「C」の氏名が記載されていたが、裏面には別の氏名「D」が記載された上で、その「D」の文字が一本の棒線によって抹消されていた。原審はこれを有効投票と判断したため、上告人が他事記載に該当するとして上告した。
あてはめ
本件投票において、裏面の氏名「D」が一本の棒線で抹消されている事実に照らせば、これは単に「書損した文字を抹消した」ものに止まる。投票者が誤って記載した内容を自ら訂正したに過ぎず、特定の意味を持つ記号や候補者以外の事項を意識的に記載した「他事記載」とは認め難い。したがって、表面に記載された「C」に対する有効な投票として算入されるべきである。
結論
本件投票は他事記載には当たらず、候補者Cに対する有効投票である。上告を棄却する。
実務上の射程
選挙訴訟における無効投票の判断基準を示す。単なる訂正や書損の抹消は「他事記載」に該当しないという「有効優先」の解釈を補強するものであり、同様の形式的瑕疵がある投票の効力を判断する際の重要な指針となる。
事件番号: 昭和32(オ)1126 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票立会人に候補者の親戚や選挙運動員を選任したとしても、直ちに選挙の公正を著しく害するとはいえない。また、注文外の投票用紙の印刷等の事態があっても、具体的な不正の証拠がなく、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがない限り、選挙を無効とはしない。 第1 事案の概要:上告人は、市町村議会等の選挙において、(…
事件番号: 昭和31(オ)729 / 裁判年月日: 昭和31年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の投票の効力判定において、投票用紙に記載された氏名等が候補者の誰を指すかにつき、客観的な記載内容のみならず証拠に基づき合理的に推認できる場合には、当該投票は有効と解される。 第1 事案の概要:上告人は、本件選挙における特定の係争投票について、その記載内容から候補者を特定できない等の理由…