他人の依頼に基き、自己名義をもつて薬局開設の登録申請をすることを他人に許容した者は、その登録がなくても、当該薬局の取引上の債務につき、商法第二三条による責任を負担するものと解すべきである。
自己名義をもつて薬局開設の登録申請をすることを他人に許容した者と商法第二三条の責任
商法23条
判旨
薬局開設の登録申請にあたり、自己の名義を使用することを他人に許容した者は、商法上の名義貸与者として、当該営業によって生じた債務について責任を負う。
問題の所在(論点)
薬局開設の登録申請名義として自己の氏名を使用することを他人に許容し、その他人が実際に登録申請を行った場合、商法9条(旧23条)の「自己の氏名を使用して営業をなすことを他人に許容した」場合に該当するか。
規範
商法9条(旧23条)にいう「自己の氏名又は商号を使用して営業をなすことを他人に許容した」場合とは、名義貸与者が、その他人の登録申請等を通じて、自己が当該営業の営業主となることの意思を示したものと認められる場合を指す。この許容があれば、名義貸与者は、当該営業主であると誤認して取引をした相手方に対し、連帯して弁済する責任を負う。
重要事実
Eは、薬局開設にあたり、地元で顔が広く行政官庁との関係で都合が良いという理由から、被上告人に対し名義貸与を依頼した。被上告人はこれを受け入れ、自己の名義で保健所に対し薬局開設および医薬品製造の登録申請を行うことを了承した。その後、実際に被上告人名義で登録申請がなされ、当該薬局において上告人との間で取引が行われた。上告人は、被上告人を営業主であると信じて取引を継続していたが、代金等の支払が滞ったため、被上告人に対し名義貸与者としての責任を追及した。
あてはめ
薬局開設の登録は保健衛生上の観点から営業主体を特定するものであり、登録申請に自己の名義を使用させることは、外部に対し自己が営業主であるとの意思を示す行為に他ならない。本件では、被上告人がEの依頼により便宜上名義を貸し、被上告人名義での登録申請を了承している。さらに、実際に被上告人名義の領収証が発行されるなど、被上告人が営業主であることを窺わせる外観が存在していた。したがって、当該薬局の業務が営業である限り、被上告人には名義貸与の事実が認められ、上告人が被上告人を営業主と誤認して取引したのであれば、被上告人はその責任を免れない。
結論
被上告人が自己の名義で薬局開設登録申請を行うことを許容したことは、商法9条(旧23条)の適用要件を満たすため、本件取引上の責任を負う可能性がある。原審が直ちに同条の適用を否定したのは誤りである。
実務上の射程
行政上の登録名義の貸与が、私法上の名義貸与者責任を基礎付けることを明示した判例。答案では「名義貸与の許容」を認定する際の有力な指標として、行政登録の有無やその了承の事実を指摘する際に用いる。また、実際の経営に関与していなくとも、登録名義という強い公的外観を付与した点に重きを置く論理構成に有効。
事件番号: 昭和35(オ)414 / 裁判年月日: 昭和36年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自己の営業上の名称(商号)の使用を他人に許諾した者は、当該他人を営業主であると誤信して取引をした相手方に対し、連帯して弁済する責任を負う(商法9条、旧商法23条)。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、訴外Dに対し、自己の営業上の名称である「E製材」という営業名を使用して営業を行うことを許諾した。…