地主が農地上に小屋を建設し使用人とその家族を居住せしめ、右農地の管理耕作にあたらせていても、右使用人は地主の作付計画に基き耕作しこれに要する農器具、肥料、農薬、種子等はすべて地主が調達し、手不足の場合は地主の他の使用人を使用し、あるいは右使用人をして地主の計算で他人を雇入れしめ、収穫物は右使用人が自家用に消費する分を除いては全部地主が収納し、右使用人に対しては定額の給料が支給されている場合は、当該農地は右地主の自作地である。
使用人に耕作せしめている農地で自作地と認められた一事例
自作農創設特別措置法2条2項
判旨
農地の所有者が他人を雇い入れ、自己の指示・計算の下で耕作を行わせ、収穫物の大部分を収納している場合には、当該農地は所有者の「自作地」にあたり、自作農創設特別措置法にいう「仮想自作地」には該当しない。
問題の所在(論点)
農地の所有者が第三者を居住させて耕作させている場合において、当該土地が「自作地」といえるか、あるいは自作農創設特別措置法3条5項2号の「仮想自作地」にあたるかが問題となる。
規範
農地の所有者が、特定の者を雇い入れ、自己の指示した作付計画に基づき、自己が調達した資材等を用いて耕作に従事させ、その収穫物を自己に帰属させている場合には、当該耕作者は独立した耕作業務を営む者ではなく、所有者の補助者にすぎない。この場合、当該農地は所有者による「自作地」と評価される。
重要事実
醤油醸造業者である被上告人は、自家消費用野菜の栽培目的で農地を買受けた。被上告人は、開墾経験のあるDに相談し、Dとその家族を農地内の小屋に居住させ、管理・耕作に当たらせた。具体的には、被上告人の指示する作付計画に基づき、被上告人が調達した農器具・肥料等を用いて耕作が行われ、人手不足の際は被上告人の使用人が補助した。収穫物はDの自家用分を除き全て被上告人が収納し、Dには月額の給料が支払われていた。
あてはめ
本件では、Dは被上告人の指示に従って耕作しており、肥料や農機具等の生産手段もすべて被上告人が負担している。また、収穫物の大半が被上告人に帰属し、Dは固定の給料を得ているに過ぎない。このような関係性は、Dが独立して農業経営を行う小作人的な地位にあるものではなく、被上告人の雇用下にある補助者にすぎないことを示している。したがって、実質的な耕作主体系は被上告人にあり、被上告人による自作地であると認められる。
結論
本件土地は被上告人の自作地であり、Dが独立して耕作業務を営んでいるとはいえないため、仮想自作地にも該当しない。
実務上の射程
農地法上の「自作」や「小作」の区別において、耕作の主体が誰であるかを判断する際の重要な基準となる。特に、指揮監督権の有無、費用負担と収益の帰属先、対価の性質(賃料か給与か)といった実態から、形式的な居住事実を超えて「経営の主体性」を判断する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)664 / 裁判年月日: 昭和28年7月3日 / 結論: 破棄差戻
地主の妻が小作人に農地の返還を求め、小作人が替地を要求したところ、地主の妻が「帰つて相談しておこう、或はまたもとのように此の田をあんたに代つて貰うことになるかも知らぬが、とにかく今年は返してくれ」と懇請したので、小作人がこれを承諾して右農地を返還した場合は、右の事実だけでは、右合意解約を、自作農創設特別措置法第六条の二…