一 鉱業権の売買契約において、買主が排水探鉱の結果品質良好と認めたときは代金を支払い、品質不良と認めたときは代金を支払わない旨を約しても、右売買契約は、民法第一三四条にいわゆる条件が単に債務者の意思のみにかかる停止条件附法律行為とはいえない。 二 売買契約成立後貨幣価値が著しく変動しても、それだけで代金額が当然修正されるものと解すべきではない。
一 条件が債務者の意思のみにかかる停止条件附法律行為にはあたらない一事例 二 売買契約後の貨幣価値の著しい変動と代金額の修正
民法134条,民法1条2項
判旨
買主が排水探鉱の結果品質良好と認めたときに代金を支払うとの約定は、債務者の意思のみに係るとはいえず、民法134条の純粋随意条件として無効になるものではない。
問題の所在(論点)
「買主が排水探鉱の結果品質良好と認めたときは代金を支払う」との約定は、民法134条が禁止する純粋随意条件(停止条件付債務者の意思のみに係る条件)に該当し無効となるか。また、顕著な経済変動を理由とした債権額の当然の修正が認められるか。
規範
民法134条にいう「条件が単に債務者の意思のみに係る」もの(純粋随意条件)とは、停止条件が債務者の全く自由な意思のみに依存する場合を指す。一方、意思決定の前提として、客観的な事実の確認や外部的な状態の変化を伴う場合には、純粋随意条件には当たらない。
重要事実
買主(被上告人)と売主(上告人)との間で締結された売買契約において、代金の支払時期について「買主が排水探鉱の結果、品質良好と認めたとき」とする旨の合意がなされた。売主側は、この条件が買主(債務者)の意思のみに係り無効であるとして争った。また、契約時から判決時までに顕著な貨幣価値の変動があったことから、債権額の修正も主張された。
事件番号: 昭和31(オ)608 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において、行政庁の承認を効力発生の条件とする旨を合意することは契約自由の原則に基づき有効であり、当該承認が得られなかった場合には、不法条件等の特段の事情がない限り、契約の効力は発生しない。 第1 事案の概要:鉱業権者であった上告人とDとの間で、鉱山設備資材の売買契約が締結された。当時、政府…
あてはめ
本件約定は、単に「支払いたくなったら支払う」という恣意的な意思表示を条件とするものではなく、「排水探鉱の結果」という客観的な調査プロセスを経て、「品質良好と認めたとき」という判断を介するものである。これは純粋に債務者の意思のみに係るとはいえず、有効な条件と解される。また、貨幣価値に著しい差異があるとしても、現行法上、それだけで当然に契約上の債権額が修正されるという根拠は存在しない。
結論
本件約定は純粋随意条件には該当せず、契約は有効である。また、貨幣価値の変動を理由とする債権額の自動的な修正は認められない。
実務上の射程
純粋随意条件として無効になる範囲を限定的に解釈する際の手がかりとなる。実務上、契約の効力発生や履行期を「当事者の確認」等に係らしめる条項をドラフトする際、客観的な判断要素を介在させることで134条の無効を回避できる可能性を示唆している。また、事情変更の原則による債権額修正についても、極めて厳格な態度を維持している点に留意が必要である。
事件番号: 昭和33(オ)718 / 裁判年月日: 昭和36年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない契約条件(代金決済方法等)を認定して売買契約の効力を認めることは、当事者の主張・立証の範囲内であれば弁論主義に反しない。また、特定の買戻し合意や代金決済合意を含む売買契約であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は上告人(被…
事件番号: 昭和32(オ)131 / 裁判年月日: 昭和34年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売主の表示した意思が特定の会社に売却する趣旨であった場合には、内心的効果意思と表示行為の間に不一致がないため、心裡留保(民法93条)が適用される余地はない。 第1 事案の概要:本件土地の所有者Dと、B電気鉄道株式会社の代表者である上告人との間で、本件土地の売買契約が締結された。その際、Dと上告人の…
事件番号: 昭和34(オ)554 / 裁判年月日: 昭和37年8月28日 / 結論: 棄却
会社が他に鉱業権を譲渡した場合に、右会社の債権者または株主であるからといつて、ただその一事により直ちに、同人が右鉱業権の譲受人に対し、その譲渡契約が無効であることを理由として右鉱業権が会社に属することの確認を求める利益を有するとはいえない。
事件番号: 昭和31(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和33年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者間に不動産の所有権の帰属や、過去の調停条項が指し示す建物の特定について争いがある場合、互いに譲歩して紛争を終結させる合意は和解契約としての効力を有する。 第1 事案の概要:上告人は昭和21年8月以降、松山市内の土地家屋(通称D)を使用してきたが、その所有権がEに留保されているのか、上告人に移…