大正一二、三年頃杉の伐採跡の伐根を除去し草を刈る等して開墾し全体に桐苗を植え数年間は肥料を施し、時々土を掘起してやわらかくする等昭和一七、八年頃までは引続き手入をし肥培管理をしたが、その後ほとんど手入をせず昭和二二年頃から再び下草を刈る等の手入をし、現在では目通リ直径七寸乃至一尺二寸位高さ七、八間位の桐の木が全区域にわたつて約三間の間隔で密生し植林による山林と異らない土地は農地とは認め難い。
肥培管理が行われたことのある土地で農地と認められなかった一事例
自作農創設特別措置法2條1項
判旨
山林を開墾し、ときどき肥培管理が行われた事実がある場合であっても、栽培対象(桐の木等)の生育状況や土地の現況が植林による山林と異ならない形態にあるときは、直ちに農地法(自作農創設特別措置法)上の「農地」と認めることはできない。
問題の所在(論点)
山林を開墾し、桐の木を育成するために継続的に肥培管理(施肥、土の掘り起こし、下草刈り等)を行っていた土地が、自作農創設特別措置法(現農地法)上の「農地」に該当するか。
規範
「農地」とは、耕作の目的に供される土地を指す。山林を開墾し肥培管理を施した場合に農地といえるか否かは、単に施肥や下草刈り等の管理がなされているかという点だけでなく、当該土地の現況、植物の生育密度、客観的な形態が山林と区別できる程度に達しているかによって判断すべきである。
重要事実
本件土地は元来杉山であったが、大正期に開墾され、桐苗が植えられた。上告人は数年間肥料を施し、土を掘り起こし、下草を刈る等の肥培管理を昭和17、18年頃まで継続し、昭和22年頃からも再び手入れを行っていた。しかし、買収計画当時、土地には直径約21cm〜36cm、高さ約13m〜15mの桐の木が約120本、全域にわたり約5.5m間隔で密生しており、その形態は植林による山林と異ならない状態であった。
事件番号: 昭和31(オ)503 / 裁判年月日: 昭和32年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未墾地の買収において、当該土地が未墾地に該当するか否かは、登記簿等の公簿上の表示にかかわらず、土地の現況によって判断すべきである。 第1 事案の概要:行政庁が本件土地を「未墾地」として買収処分を行ったのに対し、上告人は、本件土地が潮風等の影響により開拓不適地であること、また、公簿上「畑」となってい…
あてはめ
上告人は桐の育成のために肥料の散布や土壌の管理を行っており、一定の肥培管理が認められる。しかし、土地の現況を見ると、相当な大きさの桐の木が密生しており、客観的な形態は「植林による山林」そのものである。農地と認められるためには、単に時折の管理が行われているだけでは足りず、土地の現況が耕作に適した形態を備える必要がある。本件の形態に鑑みれば、いかに管理の事実があろうとも、依然として山林としての性質を維持しているといえる。
結論
本件土地は「農地」とは認められない。したがって、農地であることを前提とする上告人の主張は理由がなく、棄却されるべきである。
実務上の射程
農地の定義(客観説)に関する基礎的な判断枠組みを示す。土地の現況(客観的形態)が山林と区別できない場合には、主観的に耕作の意図があったり、部分的な肥培管理が行われていたりしても、農地性は否定される方向に働く。答案上は、農地法上の「農地」該当性が争われる場面で、土地の現況に基づくあてはめの指標として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…
事件番号: 昭和30(オ)718 / 裁判年月日: 昭和33年3月7日 / 結論: 棄却
一 農地所有者の地位、職業、子の教育関係等を考慮すれば右所有者が村内に住所を有するに至るであろう時期が七年余の将来より更におくれるかも知れない状況にある場合は、その地主は自作農創設特別措置法第四条第三項にいわゆる「当該農地のある市町村の区域内に住所を有するに至る見込のあるもの」に該当しない。 二 農地賃貸借について農地…
事件番号: 昭和41(行ツ)41 / 裁判年月日: 昭和43年5月28日 / 結論: 破棄差戻
耕地整理の施行により大略一反歩ずつに整然と区画されて後、都市計画法による都市計画区域に編入された土地を対象とする農地買収処分の無効確認訴訟において、旧所有者である原告から、右土地が大都市近郊の住宅地として開発され、戦前すでに風致地区に指定された旨の主張があり、また判示のように、右土地の耕作が必ずしも正当な権原に基づくも…