一 不動産の譲渡人がいまだその登記をなさないうちに、その不動産につき譲渡人を債務者として処分禁止の仮処分登記がなされた場合においては、譲受人がその後に所有権取得登記をしても、これを以て仮処分債権者に対抗することはできない。 二 前項の場合において、仮処分債権者が自ら所有権取得登記をなしうるにいたつたときは、譲受人に対し所有権取得登記の抹消を求めることができる。
一 処分禁止の仮処分前の処分行為に基く権利取得とその登記が仮処分登記後になされた場合の効力 二 仮処分債権者の仮処分登記後になされた登記の抹消請求の許否
民訴法755条,民訴法758条,民法177条,不動産登記法4節(25条の前)
判旨
不動産の譲受人が本登記を了する前に、当該不動産につき譲渡人を債務者とする処分禁止の仮処分がなされた場合、その後の所有権取得登記は仮処分債権者に対抗できない。仮処分後の登記具備は不動産物権変動を完了させる行為として、仮処分の禁ずる処分行為と同一視されるためである。
問題の所在(論点)
不動産の二重譲受人の一人が、他方の譲受人による処分禁止の仮処分登記がなされた後に所有権移転登記を備えた場合、当該登記をもって仮処分債権者に対抗できるか。仮処分後に「対抗要件を具備する行為」が仮処分によって禁じられる「処分行為」に含まれるかが問題となる。
規範
不動産につき処分禁止の仮処分が執行された場合、その後に具備された所有権取得登記をもって仮処分債権者に対抗することはできない。仮処分の目的は被保全権利の執行不能等の危険を防止する点にあり、仮処分後の譲渡等の処分行為のみならず、対抗要件具備のための登記もまた、物権変動を完了させる行為として処分行為と同一視され、仮処分の禁止対象に含まれると解すべきである。
重要事実
本件土地の所有者Dは、昭和19年1月に土地をE(被上告人の先代)に売り渡した。被上告人は昭和22年5月、Dに対し所有権移転登記手続請求訴訟を提起するとともに、同請求権を保全するため処分禁止の仮処分命令を得て執行した。一方、上告人らは同一土地につき昭和17年8月にDから買い受けたと主張し、前記仮処分登記の後である昭和24年3月に所有権取得登記を了した。被上告人はDに対する本案訴訟で勝訴確定している。
あてはめ
本件において、上告人らが所有権取得登記を具備したのは昭和24年3月であり、被上告人による仮処分執行(昭和22年)の後である。仮処分は将来の執行を確実にするためのものであり、その登記後の登記具備は物権変動を完成させる処分行為と同一視される。したがって、仮処分後に登記を了した上告人らは、仮処分の効力により被上告人に対してその所有権取得を対抗できない。また、被上告人は本案訴訟で勝訴確定しており自ら登記をなしうる地位にあるため、上告人らに対し登記抹消を請求しうる。
結論
仮処分後の登記具備は仮処分債権者に対抗できないため、被上告人は上告人らに対し所有権取得登記の抹消を請求できる。
実務上の射程
二重譲渡における仮処分債権者と第三取得者の優劣を決定する重要判例である。民事保全法上の処分禁止の仮処分の効力を論じる際の基礎となる。答案上は、登記の前後ではなく「仮処分登記とそれ以降の登記具備」という時系列に着目し、仮処分の目的(保全の必要性)から対抗要件具備行為を処分行為と同一視する論理を用いる。
事件番号: 昭和41(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: 棄却
不動産の譲受人を債権者とし譲渡人を債務者として右不動産について処分禁止の仮処分登記が経由され、その後第三者に対する所有権移転登記が経由された場合において、仮処分債権者たる譲受人より譲渡人に対する本案訴訟としての所有権移転登記手続請求の訴と右第三者に対する所有権取得登記の抹消登記手続請求の訴とが併合して審理され、仮処分債…
事件番号: 昭和38(オ)1137 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
甲乙の共有にかかる家屋について、甲が乙の作成名義を偽造して、売買による前所有権の移転登記をした場合において、甲の共有持分に関しては、右偽造による登記の無効を生ずることはない。