一 宗教法人令(昭和二〇年勅令第七一九号)により寺院は宗派とは別個の法人であるが、住職の任命について規定した宗派の規則は宗派に所属する寺院にも適用されるものと解すべきである。 二 憲法の保障する信教の自由は、宗派の管長が宗派の規則に従つてなした寺院の住職の任命を、その住職が徳行を欠き、檀信徒の信服しない者であるとの理由で排除できる権能を檀信徒の与えたものではない。
一 宗教法人令による寺院と住職の任命に関する宗派の規則の適用の有無 二 檀信徒の信任しない者を住職に任命した場合と信教の自由侵害の有無
宗教法人令(昭和20年勅令719号)2条,憲法20条
判旨
包括宗教団体(宗派)の規則は、所属する被包括宗教団体(寺院)及びその檀信徒にも適用され、これに従う義務がある。また、宗則に基づく住職の任命は、檀信徒が信仰を拒否する自由を奪うものではなく、憲法20条の信教の自由を侵害しない。
問題の所在(論点)
包括宗教団体の定める規則(宗則)が所属寺院や檀信徒を拘束するか。また、宗則に基づき、檀信徒が望まない住職を任命することが、檀信徒の憲法20条に基づく信教の自由を侵害するか。
規範
宗教法人令(当時)の規定に照らせば、包括宗教団体と所属寺院は別個の法人ではあるが、包括宗教団体は所属寺院を監督する関係にある。そのため、宗派の規則は所属寺院及びその檀信徒にも適用される。また、憲法20条が保障する信教の自由は、何人も自己の欲するところに従い、特定の宗教を信じ、又は信じない自由を保障するものであり、国家等の権力による不当な侵害を禁じるものであるが、所属宗教団体の規則に従った住職任命行為を排除する権能までを檀信徒に付与するものではない。
重要事実
B1宗(宗派)の管長が、所属するE寺の住職としてB2を任命した。B1宗の宗則によれば、住職が欠けた日から90日以内に住職候補者が選定されないときは、管長が住職を任命できると規定されていた。これに対し、E寺の檀信徒らは、自分たちが信服できない僧侶を住職として任命することは、檀信徒の意思を無視するものであり、信仰生活を破壊し信教の自由(憲法20条)を侵害するものであるとして、その効力を争った。
あてはめ
宗教法人令の仕組み上、寺院は規則中に所属宗派を記載し、変更の際も主管者の承認を要するなど、宗派の監督に服する関係にある。したがって、B1宗の宗則はE寺及びその檀信徒を拘束し、住職任命規定も当然に適用される。本件において、90日以内に選定がなされなかった事実に鑑みれば、管長による任命は宗則に合致する。また、檀信徒は特定の住職を拒否する自由や、その住職から教義を受けない自由は有しているが、団体の規則に従った適法な人事を排除するまでの法的権利を憲法上の信教の自由から導き出すことはできない。
結論
B1宗管長による住職任命は適法であり、檀信徒の信教の自由を侵害するものではない。上告棄却。
実務上の射程
宗教団体の内部自治(人事)に関する判断基準を示したもの。包括宗教団体と被包括宗教団体の私法上の関係(規約の拘束力)を確認する際に引用される。信教の自由の限界として、団体の自己決定権と個人の信仰の自由が衝突した場合、団体の内部規則に基づく適法な手続が優先されることを示唆する。
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