賃借している土地が、昭和二〇年勅令第六三六号土地工作物使用令第一一条によつて進駐車が接収使用中のものであつても、賃借人は賃貸借の登記があるか、またはその土地の上に登記した建物を有しない限り、その賃借権をもつて土地の新取得者に対抗できない。
進駐車の接収使用中の土地について存する対抗要件を欠く賃借権とその対抗力
民法605条,土地工作物使用令(昭和20年勅令第636号)11条
判旨
土地が接収されていた場合であっても、土地の譲受人に対して土地賃借権を対抗するためには、民法605条の登記又は建物保護法1条(現:借地借家法10条1項)の登記を備えている必要がある。
問題の所在(論点)
土地工作物使用令により土地が接収され、建物が滅失したような特殊な状況において、土地賃借人は、民法605条や建物保護法1条(借地借家法10条1項)の対抗要件を備えずして、土地の譲受人に対し賃借権を対抗できるか。
規範
土地の賃借人は、賃貸人から所有権を譲り受けた第三者に対し、民法605条に基づく賃貸借の登記があるとき、又は建物保護法1条(現:借地借家法10条1項)に基づきその土地の上に登記した建物を有するときに限り、賃借権を対抗することができる。これは、土地工作物使用令に基づく進駐軍による土地の接収中、あるいは接収解除後であっても同様である。
重要事実
上告人は本件土地の賃借人であり、被上告人は元の土地所有者(賃貸人)から所有権を譲り受けた第三者である。本件土地は昭和20年勅令636号土地工作物使用令11条に基づき進駐軍によって接収され、その際、地上建物は取り除かれていた。その後、接収が解除されて当事者に返還されたが、上告人は土地の対抗要件を備えていない状態で、新所有者である被上告人に対し賃借権を主張した。
あてはめ
本件において、上告人は賃借人として土地の使用を継続する地位にあると主張するが、対抗要件の具備については民法等の原則に従うべきである。接収によって地上建物が取り除かれたという事情があっても、法律上の対抗要件(土地賃貸借の登記、または登記ある建物の所有)を欠く以上、新所有者である被上告人に対してその権利を主張することはできない。接収中か接収解除後かを問わず、対抗要件の原則は修正されないと解される。
結論
土地賃借人は、対抗要件を備えていない限り、所有権の新取得者に対して土地賃借権を対抗することはできない。
実務上の射程
借地上の建物が滅失した場合の対抗力維持に関する借地借家法10条2項の議論の前置となる判例である。不可抗力による建物滅失や公法上の接収があった場合でも、第三者に対する関係では対抗要件の原則が維持されることを示したものであり、答案上は対抗要件の厳格な要請を説明する際に活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)30 / 裁判年月日: 昭和27年5月6日 / 結論: 破棄差戻
一 占有の訴を本案とする仮処分申請の当否については、専ら占有関係によつてのみ判断すべきであつて、本権の理由(特別都市計画法第一四条による換地予定地を使用収益し得る権原)によることを得ない。 二 換地予定地の指定があつても、従来の事実上の占有状態に変更のないかぎり、当然には、その土地の占有権に変動移転を生ずるものではない…