一 手形に「株式会社甲造船所E出張所々長乙」と記載した裏書は、乙が甲を代理してなした裏書と認むべきである。 二 裏書の連続の有無は手形の外観から形式的に判断すべきであつて、手形に代理人として裏書をなした者が裏書につき代理権を有していたかどうかは、裏書の連続に影響がない。
一 代理人による裏書と認むべき一事例 二 代理人として裏書をした者が代理権を有しなかつた場合と裏書の連続の有無
手形法8条,手形法16条
判旨
手形法上の裏書の連続は、手形の外観から形式的に判断すべきであり、代理人名義による裏書において代理権が実際に存在するか否かは、裏書の連続の有無に影響を与えない。
問題の所在(論点)
手形法14条1項にいう「裏書の連続」の存否を判断するにあたり、代理人名義の裏書において実際に代理権が存在すること(実質的有効性)までが必要とされるか。
規範
裏書の連続(手形法14条1項)の有無は、手形の外観から形式的に判断すべきである。したがって、代理人の肩書を付した記名押印による裏書がなされている場合、その代理権が事実として存在するかという実質的権利関係は、裏書の連続の判断を左右しない。
重要事実
本件約束手形の第一裏書人欄には、「株式会社D造船所E出張所所長F」という記載がなされていた。この裏書について、FがD造船所の代理人として行ったものと認められる外観を備えていたが、上告人は、Fに事実上の代理権が欠けていることを理由に裏書の連続が欠如していると主張して争った。
あてはめ
本件の第一裏書人欄における「株式会社D造船所E出張所所長F」との記載は、その文言上、FがD造船所の代理人として裏書を行ったものと外観上認められる。手形の流通性を確保するためには裏書の連続は形式的に判断されるべきであり、Fに実際に代理権があったか否かという実質的な事情を考慮する必要はない。したがって、外観上代理人による裏書と認められる以上、形式的な裏書の連続は維持されているといえる。
結論
本件手形の裏書の連続に欠けるところはなく、Fに実質的な代理権がなかったとしても、手形法14条1項の裏書の連続は認められる。
実務上の射程
手形法14条1項の「裏書の連続」に関する基本的判例である。答案上では、無権利者による裏書や無権代理人による裏書が介在した場合であっても、手形の外観から被裏書人と裏書人の名称が一致していれば連続が認められることを論証する際に「形式的資格」の根拠として引用する。実質的な代理権の有無は善意取得(16条2項)の文脈で検討すべき事項であり、裏書の連続の段階では区別して論じる必要がある。
事件番号: 昭和31(オ)207 / 裁判年月日: 昭和35年1月12日 / 結論: 棄却
甲会社名古屋出張所取締役所長として約束手形を裏書譲渡した乙が、甲会社を代理または代表する権限を有しなかつた場合でも、裏書が形式的に連続しており、被裏書人に悪意または重大な過失がなかつたときは、右被裏書人は振出人に対しその手形上の権利を行使できるものと解するのが相当である。