昭和二〇年法律第六四号による改正後の農地調整法第六条の二所定の最高制限価格を超える額を対価と定めたとの事実のみでは、その農地の売買契約自体を全面的に無効とは為し難い。
農地価格の最高制限を超える売買契約の効力
農地調整法(第1次改正後)6条ノ2
判旨
価格統制規定に違反して定められた売買代金は、原則として超過部分のみが無効となり、売買契約全体が当然に無効となるわけではない。
問題の所在(論点)
価格統制規定(農地調整法6条の2第1項)に違反する代金で締結された売買契約の私法上の効力、およびその無効の範囲(全体か一部か)。
規範
価格統制の規定に違反した売買は、公序良俗等に反する特段の事情がない限り、全面的に無効とするものではなく、法所定の制限価格を超過する部分のみが無効となる。また、農地調整法6条の2のような価格統制規定は、価格の調整を目的とするものであって、所有権移転そのものの統制を目的とするものではないから、法定の限度に引き下げられた価格による売買として有効に存続し得る。
重要事実
農地を含む土地の売買契約において、約定された売買代金が農地調整法6条の2第1項の定める法定価格を超過していた。原審は、当該超過により売買契約全体が無効であると判断し、買主(上告人)による所有権移転請求等を排斥した。なお、本件売買の目的物には統制価格のある田畑のほかに、統制価格のない山林が含まれていた。
事件番号: 昭和29(オ)740 / 裁判年月日: 昭和31年5月18日 / 結論: 棄却
農地の売買契約において、臨時農地価格統制令(昭和一六年勅令第一〇九号)第三条第一項所定の最高価格を超過した代金額の約定があつたというだけでは、超過した代金額の約定部分が無効となるに止まり、統制価格の範囲内では契約は有効たるを失わない。
あてはめ
農地調整法6条の2は文理上、価格の制限を目的とする規定であり、農地の移転自体については別途行政庁の監督規定が存在する。本件売買がたとえ法定価格を超えていても、価格が法定限度内に引き下げられれば、法の趣旨に反することなく所有権移転を認めることができる。したがって、法定内価格での契約と、事後的に法定内に引き下げられた契約を区別する理由はない。また、山林については統制価格の定めがない以上、山林を含む全体の売買価格が直ちに統制価格を超過すると断ずることはできず、全体を無効とすべき特段の事情の主張立証もなされていない。
結論
売買契約は全面的に無効となるものではなく、価格の超過部分のみが無効となる。原審が売買全体を無効とした判断には法令の解釈を誤った違法がある。
実務上の射程
強行規定(取締法規)違反の私法上の効力に関するリーディングケースの一つ。特に「一部無効」の理を適用し、契約の維持を図る判断枠組みとして活用できる。答案上は、公序良俗(民法90条)や強行法規違反を論じる際、規定の目的が「行為自体の禁止」か「内容の制限」かを区別し、一部無効の可否を検討する際の根拠となる。
事件番号: 昭和31(オ)694 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の制限等により農地の自由な処分が禁止されている場合において、当該制限に抵触する態様で締結された売買契約は、当初から履行不能なものとして無効である。 第1 事案の概要:上告人らは、農地の売買契約の有効性を主張したが、当該農地は自作農創設特別措置法16条に基づき売渡しを受けたものであった。当時…
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
事件番号: 昭和44(オ)852 / 裁判年月日: 昭和46年9月21日 / 結論: 棄却
債務の一部ずつの弁済供託がなされた場合であつても、各供託金の合計額が債務全額に達したときは、その全額について有効な供託があつたものと解するのが相当である。