法人の使用人(A支所長事務取扱)が法人の目的の範囲外の取引をしたことに基き、法人に不当利得ありとされる場合において、右利得につき右使用人の悪意を以て法人の悪意とすることはできない。
不当利得と法人の悪意。
民法704条,民法43条,民法53条,民法101条
判旨
法人の使用人が法人の目的外の行為により金員を取得した場合、当該使用人が悪意であっても、そのことのみから直ちに法人自身を悪意の受益者と断定することはできない。法人の悪意を認めるには、当該使用人が法人の機関であるか、または代理権を有すると認められる法的根拠を要する。
問題の所在(論点)
法人の目的範囲外の行為によって法人が利得を得た場合、行為者である使用人の「悪意」を当然に「法人の悪意」として帰せしめることができるか。民法704条の悪意の受益者の判定基準が問われた。
規範
不当利得における受益者の善意・悪意(民法704条)を法人の基準で判断する場合、その行為をした個人が法人の「機関」であるときは、その者の悪意を法人の悪意とみなすことができる。しかし、その者が単なる「使用人」に過ぎない場合には、法人の目的範囲外の事項について法人を代理する権限を有しないため、その者の悪意をもって直ちに本人の悪意と目することはできない。
重要事実
上告人(法人A)の支所長事務取扱であったEは、被上告人との間で法人の目的範囲外である受託契約を締結し、76万円をAの預金口座に振り込ませた。原審は、当該契約が目的外で無効であり、Aへの入金が不当利得にあたるとした上で、行為者であるEが「法律上の原因がないこと」を知っていた(悪意)以上、法人Aも悪意の受益者であると判断した。
あてはめ
Eは「支所長事務取扱」という地位にあるが、本件受託契約は法人Aの事業目的外の行為である。目的外の行為については、原則として法人を代理する権限は発生しない。したがって、Eが法人の「機関」としての地位にあるのか、あるいは単なる「使用人」に過ぎないのかを明確に確定しないまま、Eの主観のみを理由に法人を悪意とした原審の判断は、代理権のない者の主観を本人に及ぼす法的根拠を欠いている。
結論
行為者が法人の機関である等の特段の事情がない限り、使用人の悪意を直ちに法人の悪意と解することはできない。原判決を破棄し、Eの地位や権限の有無を審理させるため差し戻した。
実務上の射程
法人の悪意を論じる際、行為者が代表取締役等の機関であれば当然にその知情を法人の知情とする(民法101条1項類推)が、支店長等の使用人の場合は、当該事項について代理権(表見代理を含む)を有するか、あるいは機関から特定の指示を受けていたか等の事実関係を慎重に検討すべきであるという射程を持つ。
事件番号: 昭和30(オ)738 / 裁判年月日: 昭和33年5月20日 / 結論: 棄却
価統制令に違反した価額で魚粕を買い受けるものであることを知りながら、その買主に買受資金を貸与した場合であつても、原審認定の事情(原判決理由参照)の下になされたものであるときは、民法第七〇八条の適用はなく、貸主は貸金の返還を請求することができる
事件番号: 平成18(受)276 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: 破棄差戻
利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,その預金口座への払込みを受けた際に貸金業の規制等に関する法律18条1項に規定する書面を債務者に交付していなかったために同法43条1項の適用を受けられない場合において,当該貸金業者が,事前に債務者に約定の各回の返済期日及び返済金額等を記載した償還表を交付してい…