労使双方の合意に基き、就業規則中に「就業規則の改正は労働組合との協議によつて行う」旨定めた場合であつても、特段の事情のないかぎり、その協議を経ないでした右規則の改正を無効とはいえない。
労使双方の合意に基く就業規則の条項に違反し組合との協議を経ないでした就業規則の改正の効力
労働基準法90条
判旨
就業規則の変更に際し労働組合との協議を要する旨の定めがあっても、それが労働協約等に基づかず、かつ協議不調時の措置も定められていない場合は、当該協議は訓示的な義務に留まり、これを経ない変更も直ちに無効とはならない。
問題の所在(論点)
就業規則の変更について「労働組合との協議によって行う」旨の定めがある場合に、当該協議を経ずになされた就業規則の変更の私法上の効力が認められるか。また、これが憲法28条の団体交渉権を侵害しないか。
規範
就業規則は本来使用者の経営権の作用として一方的に制定・変更し得るものである。労使間の合意により変更に際して協議を要する旨を定めたとしても、その定めが労働協約や経営協議会規則に基づかない単なる就業規則上の規定であり、かつ協議が調わない場合の措置について特段の定めがない限り、当該規定は使用者が協議義務を負担するという趣旨に留まる。したがって、協議を経ないで行われた変更であっても、その効力自体は否定されない。
重要事実
使用者が就業規則を改正した際、従来の就業規則には「就業規則の改正は労働組合との協議によって行う」旨の定めがあった。しかし、使用者は十分な協議を経ずに改正を強行したとして、労働組合側が団体交渉権を保障する憲法28条に違反し無効であると主張して争った。なお、当該協議条項は労働協約に基づくものではなく、改正に際しては5日間の回答期間が設けられていた。
事件番号: 昭和28(ク)79 / 裁判年月日: 昭和29年6月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条1項は国に対し健康で文化的な最低限度の生活を営ませる義務を課すにとどまり、個々の国民に具体的・現実的な権利を付与するものではない。また、憲法21条の表現の自由は、私法関係等に基づく義務により制限を受け得る。 第1 事案の概要:会社側の整理基準に基づき、欠勤・遅参・早退が多い者(基準6該当…
あてはめ
まず、就業規則の制定権は元来使用者側にある(労基法90条参照)。本件の協議条項は、労働協約や経営協議会規則等の強力な根拠に基づくものではなく、単に労使協議により作成された就業規則内に置かれたものに過ぎない。また、協議が不調に終わった場合の具体的措置も定められていない。これらの事実に鑑みれば、本件規定は使用者に協議義務を課すに留まり、協議の不履を理由に改正の効力を左右する趣旨ではないと解される。本件では5日間の回答期間を設けており、独断専行ともいえないため、協議義務違反の程度も改正を無効とするほどではない。
結論
就業規則の改正は有効であり、協議手続の欠落を理由にその効力を否定することはできない。また、このような解釈は団体交渉権を否定するものではなく、憲法28条には違反しない。
実務上の射程
就業規則の変更手続に関する訓示規定の解釈を示す。答案上は、労働協約による同意条項(いわゆる『同意条項』)がある場合と、単なる就業規則上の『協議条項』がある場合を区別する際の根拠として活用できる。本判例は後者のケースにおいて、経営権の優越を背景に手続不備が直ちに無効を招かないことを示している。
事件番号: 昭和25(ク)103 / 裁判年月日: 昭和26年4月2日 / 結論: 棄却
労働組合法第一四条にいわゆる署名とは、みずから自己の氏名を書くことをいい記名捺印を含まない。
事件番号: 昭和24(ク)14 / 裁判年月日: 昭和24年7月22日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】民事訴訟法における5日の抗告提起期間の定めは、憲法上の問題の検討を含め、期間内に行うことが不可能とは言えないため、憲法に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、昭和24年2月28日に原裁判所の決定を受領したが、抗告状を提出したのは同年3月13日であった。当時の民事訴訟法419条の2第2項は、抗告…
事件番号: 昭和40(オ)145 / 裁判年月日: 昭和43年12月25日 / 結論: 棄却
一、使用者が、あらたな就業規則の作成または変更によつて、労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないが、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されないと解すべきである。 二、従来停年制のな…