所有地上に家屋を有する者が、その家屋のみを他に仮装譲渡した場合において、右仮装譲受人よりさらにこれを善意で譲り受けた者に対し、家屋敷地の賃貸を承諾しない場合は、右善意の譲受人は土地所有者に対し家屋の買取請求権を有する。
地上家屋の仮装譲受人からこれを善意で譲り受けた者の家屋買収請求権の有無
民法94条,借地法10条
判旨
土地所有者から建物を仮装譲受した者から、さらに善意で建物を譲り受けた第三者は、土地所有者が土地賃貸借の設定を承諾しない場合、借地法10条(現行借地借家法13条参照)を類推適用して建物買取請求権を行使できる。
問題の所在(論点)
虚偽表示(民法94条1項)により建物所有権を取得した善意の第三者(同2項)が、土地所有者に対し、賃貸借等の敷地利用権が設定されない場合に建物買取請求権(旧借地法10条、現行借地借家法13条)を行使できるか。
規範
建物が不法占有に近い状態にある場合であっても、建物を収去破壊するよりは、その経済的価値を保持し社会経済的損失を防ぐ必要がある。したがって、土地所有者が仮装譲渡の無効を対抗できない善意の第三者に対し土地賃貸借の設定を拒絶する場合には、当該第三者に建物買取請求権を認めるべきである。
重要事実
土地建物所有者である被上告人が、建物のみをDに仮装売渡した。その後、上告人がDから本件建物を善意で買い受け、所有権移転登記を完了した。被上告人は上告人に対し、敷地の不法占有を理由として建物収去土地明渡を求めた。これに対し上告人は、建物買取請求権を主張した。
事件番号: 昭和37(オ)294 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
借地権の無断譲渡を理由として土地賃貸借契約が解除されたのち地上建物を取得した第三者は、該建物の買取請求権を有しない。
あてはめ
被上告人は、善意の第三者である上告人に対し、Dとの間の仮装売買の無効を対抗できない。上告人の建物所有は、被上告人において承認すべき法律関係にある。それにもかかわらず、被上告人が上告人のために土地賃貸借の設定を承諾しないのであれば、建物の経済的価値を保持する社会的必要性から、借地法10条の規定を及ぼすべきである。
結論
上告人は建物買取請求権を有すると解されるため、原審がこの主張を審理しなかったのは違法であり、破棄差戻しを免れない。
実務上の射程
対抗関係や無効主張が絡む場面で、形式上は敷地利用権がない建物の譲受人を保護する法理として重要である。現行法下では借地借家法13条の類推適用の可否という文脈で、社会経済的価値の保存を理由に立論する際に参照すべき判例である。
事件番号: 昭和37(オ)295 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、賃貸人の承諾があれば第三者が借地権を取得し得る地位にあることを前提とするため、借地権消滅後に建物を取得した者には認められない。 第1 事案の概要:土地賃借人Dの地上建物が公売に付され、訴外Eが買得した。土地賃貸人Fは、Dに対し借地権の無…
事件番号: 昭和38(オ)604 / 裁判年月日: 昭和40年1月12日 / 結論: 棄却
無断転借人が建物を建築した場合には、右建物について買取請求権は生じない。
事件番号: 昭和39(オ)1214 / 裁判年月日: 昭和41年3月1日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得して賃借土地の転貸を受けた場合において、賃貸人が転貸を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基づく第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)1349 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 棄却
表意者自身において要素の錯誤による意思表示の無効を主張する意思がない場合には、原則として、第三者が右意思表示の無効を主張することは許されない。