原判決(後記)の確定した事実関係のもとにおいては、被告(内縁の夫)は、自己の責に帰すべき事由により原告(内縁の妻)との婚姻の予約を履行不能に陥らしめたものというのが相当である。
自己の責に帰すべき事由により婚姻の予約を履行不能に陥らしめたものと認められる一事例
民法415条
判旨
婚姻予約の当事者一方が、正当な事由がないにもかかわらず予約の履行を不能にした場合には、予約不履行による損害賠償責任を負う。
問題の所在(論点)
婚姻予約の当事者がその履行を拒絶し不能にした場合において、損害賠償責任を負うための要件となる「正当な事由」の有無が問題となる。
規範
婚姻予約(結納等の成立を要しない)に基づき、当事者は誠実に婚姻を成立させる義務を負う。正当な事由なくこの義務を怠り、婚姻を不能に陥らせた場合は、債務不履行(民法415条参照)または不法行為(民法709条参照)の理に基づき、相手方に対し損害賠償義務を負う。
重要事実
上告人と被上告人との間で婚姻の予約が成立していたが、上告人がその履行を拒絶し、または履行を不能にする行為を行った。原審の認定によれば、上告人が婚姻予約を履行しないことについて、客観的に正当と認められる特段の事情は存在しなかった。そのため、被上告人は婚姻予約不履行を理由として損害賠償を求めた。
あてはめ
原審の認定した事実および弁論の全趣旨によれば、上告人は婚姻予約を履行すべき義務があるにもかかわらず、これを履行せず不能に至らしめた。この不履行を正当化するような事由は認められない。したがって、上告人の行為は正当な理由のない不履行といえる。婚姻予約は法的保護に値する合意であり、これを恣意的に破棄することは違法な権利侵害または義務違反を構成する。
結論
上告人は正当な事由なく婚姻予約の履行を不能に陥らせたものであるから、予約不履行に基づく損害賠償責任を免れない。
実務上の射程
婚姻予約(婚約)の成立および不当破棄の場面で活用する。実務上は、結納等の形式的儀礼がなくても、合意の存在と正当な理由のない破棄(履行不能)があれば、損害賠償請求が認められることを示す基準となる。
事件番号: 昭和37(オ)1200 / 裁判年月日: 昭和38年9月5日 / 結論: 棄却
当事者が真実夫婦として共同生活を営む意思で婚姻を約し長期にたり肉体関係を継続するなど原審判決認定の事情(原審判決理由参照)のもとにおいて、一方の当事者が正当の理由がなくこれを破棄したときは、たとえ当事者がその関係を両親兄弟に打ち明けず、世上の習慣に従つて結納をかわし、もしくは同棲していなくても、相手方は、慰藉料の請求を…