一 相手方が不知をもつて答えた第三者作成の文書については、特段の立証はなくても、弁論の全趣旨により、成立の真正を認めることができる。 二 手形の被偽造者は、手形を偽造されるにつき重大な過失があつたと否と、また受取人の善意であつたと否とにかかわらず、偽造手形により何ら手形上の義務を負うものではない。
一 第三者作成文書の成立の真正の認定 二 手形の被偽造者の手形上の責任
民訴法325条,民訴法185条,手形法69条
判旨
手形の被偽造者は、原則として偽造手形による手形上の義務を負わず、このことは被偽造者に重大な過失がある場合や受取人が善意である場合であっても左右されない。
問題の所在(論点)
手形が偽造された場合、被偽造者に重大な過失があること、または受取人が善意であることを理由として、被偽造者に手形債務を負わせることができるか。
規範
手形行為が偽造された場合、被偽造者はその手形により何ら手形上の義務を負わない。この原則は、被偽造者に重大な過失があったか否か、また手形受取人が善意であったか否かといった事情によって変更されるものではない。
重要事実
上告人の名義で手形が発行されたが、その手形は第三者によって偽造されたものであった。第一審および原審は、証拠に基づき当該手形が偽造であると認定した。これに対し上告人は、手形の流通性や社会上の地位を鑑み、被偽造者に重大な過失がある場合や受取人が善意である場合には責任を負うべきであると主張し、上告した。
あてはめ
手形行為は署名の自署(または記名押印)を前提とするものであり、偽造された手形はそもそも被偽造者の意思に基づくものではない。したがって、被偽造者に重大な過失が認められる場合や、取引の相手方たる受取人が善意である場合、さらには手形の流通促進という社会的要請を考慮したとしても、意思に基づかない署名によって手形上の責任が生じることはない。
結論
被偽造者は手形上の義務を負わない。上告人の主張は独自の見解であり、採用できない。
実務上の射程
手形偽造における被偽造者の責任を否定する基本的立場を明確にしたものである。答案上は、表見代理(民法110条等)の類推適用が検討される余地はあるものの、手形法上の原則としては「無責任」であることを本判例を根拠に論じるべきである。
事件番号: 昭和25(オ)291 / 裁判年月日: 昭和26年10月19日 / 結論: 棄却
強迫による手形行為取消の抗弁は、手形法第一七条にいわゆる「人的関係に基く抗弁」である。