内務大臣が認定を誤り旧国籍法第七条第二項第五号に反して帰化を許可しても、その許可は無効ではない。
旧国籍法第七条第二項第五号に違反する帰化許可の効力
旧国籍法(明治33年法律66号)7条
判旨
行政処分の違法が当然無効となるのは、その違法が重大かつ明白である場合に限られる。帰化許可において国籍法上の条件を満たさない認定上の過誤があっても、直ちに重大明白な違法とはいえず、許可処分は当然無効とはならない。
問題の所在(論点)
行政処分に瑕疵がある場合において、当該処分が当然無効と解されるための要件。特に、帰化許可要件の認定に過誤がある場合に、それが「重大かつ明白」な違法として当然無効になるか。
規範
行政処分が権限ある機関の処分としての外観的形式を備える限り、たとえ違法であっても、その違法が「重大かつ明白」である場合を除き、当然無効とはならない。帰化許可要件(旧国籍法7条2項5号等)の認定に過誤があったとしても、それは原則として取消事由にとどまり、当然無効を招来する瑕疵とはいえない。また、二重国籍防止の趣旨を含む規定であっても、その要件充足のみを特別に許可処分の有効要件(欠缺すれば当然無効となる要件)と解することはできない。
重要事実
英国籍を有し日本に居住していた被上告人は、太平洋戦争中の昭和17年、内務大臣に対し帰化申請を行い、翌年許可を受けた。しかし、後に被上告人は、当時の英国法によれば戦時中の敵国への帰化は無効であり英国籍を喪失しないため、帰化の条件(無国籍または前国籍喪失)を定めた旧国籍法7条2項5号を満たさず、当該帰化許可処分は当然無効であると主張して、日本国籍を有しないことの確認を求めて提訴した。
あてはめ
本件帰化許可において、仮に内務大臣の認定に過誤があり、客観的には帰化条件を具備していない者に許可を与えたとしても、それは認定上の過誤にすぎず、直ちに重大かつ明白な違法があるとはいえない。特に、外国の判例法上の解釈(戦時中の英国籍喪失の成否)という複雑な問題を包含する場合、その認定の誤りが「明白」であるとは断じていえない。また、旧国籍法が二重国籍を絶対的に排除していないこと(同法11条等)に照らせば、5号の条件欠缺を直ちに処分の有効要件欠缺と結びつけることもできない。
結論
本件帰化許可処分に当然無効といえるほどの重大明白な瑕疵はない。したがって、被上告人が日本国籍を有しないとの請求を認容した原判決は違法であり、破棄を免れない。
実務上の射程
行政処分の無効事由としての「重大明白説」を確立したリーディングケースである。答案上は、行政法における公定力の反面としての無効認定基準として引用する。認定の難易(外国法の解釈等)が「明白性」の判断に影響を与える点も重要である。
事件番号: 昭和25(オ)318 / 裁判年月日: 昭和32年7月20日 / 結論: 棄却
一 日本国籍離脱が無効な場合には、その後なされた国籍回復許可も無効である。 二 現在日本国籍を有することについて争のない場合でも、その国籍取得が国籍回復許可によるものではなく日本人を父としての出生したことによると主張する者はその旨の確認を求める法律上の利益がある。