五反余の農地を耕作していた農業経営者が、さらに自作農創設特別措置法により一畝二一歩の農地の受渡を受けても、政府が同法第一五条によつて右耕作者の居住する家屋の宅地を附帯買収するについては、右売渡農地の経営に右宅地を必要とするの事情を要する。
自作農創設特別措置法による僅少の農地の売渡と同法第一五条第一項による宅地の附帯買収。
自作農創設特別措置法15条1項
判旨
自作農創設特別措置法15条に基づく宅地の買収は農地の売渡しに附帯して行われるものであるから、その買収は当該売渡農地の経営に必要である場合に限定される。したがって、全耕作面積に対し売渡農地が僅少な場合には、農業経営全般に必要であるだけでなく、売渡農地自体の経営に当該宅地を必要とする特別の事情を要する。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法15条に基づく宅地の買収要件として、買受人の農業経営全般に必要であれば足りるか、それとも「売渡農地の経営」に必要であることが必要か。
規範
自作農創設特別措置法15条による宅地等の買収は、農地の売渡しに附帯して行われるものである。したがって、当該宅地等の買収が認められるためには、単に買受人の農業経営全般に必要であるだけでは足りず、当該「売渡農地の経営に必要」であることを要する。特に、売渡農地が全耕作面積の一部に過ぎない場合には、当該売渡農地自体の経営にその宅地を必要とする「特別の事情」が存することを要する。
重要事実
訴外Dは、自作農創設特別措置法に基づき、田畑1畝21歩の売渡しを受けた。一方で、Dが耕作する全面積は5反2畝17歩に及んでいた。政府がDの申請に基づき、Dが賃借権等を有していた本件宅地の買収を行ったところ、その適法性が争われた。原審は、本件宅地がDの「農業経営上極めて緊要」であるとして買収を是認したが、売渡農地の経営に必要か否かについては具体的に判示しなかった。
あてはめ
Dが売渡しを受けた農地(1畝21歩)は、Dの全耕作面積(5反2畝17歩)の極めて少部分に過ぎない。このような場合、本件宅地がDの農業経営一般に必要であるとしても、それだけで直ちに「売渡農地の経営に必要」であると断ずることはできない。本件宅地の買収を是認するためには、売渡農地自体の経営に本件宅地を必要とする特別の事情を具体的に明らかにする必要があるが、原審はこれを欠いている。
結論
本件宅地の買収を適法とした原判決には、法律の解釈を誤り審理を尽くさなかった違法がある。したがって、原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
行政処分(買収)の要件解釈において、条文の文理および制度趣旨(農地売渡しへの附帯性)から、裁量の範囲を限定的に解釈する手法として活用できる。特に「農業経営一般」という広い概念と「特定の売渡農地の経営」という個別的な要件を区別し、事案の特殊性(面積比率等)に応じた高度な必要性の立証を求める際の論理モデルとなる。
事件番号: 昭和26(オ)279 / 裁判年月日: 昭和29年3月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法15条1項2号による宅地・建物の買収は、公共の福祉の必要から行われるものであり、憲法14条及び29条に違反しない。また、買収対象となる宅地・建物は、売渡農地と密接不可分である必要はなく、自作農となるべき者の農業経営に必要と認められれば足りる。 第1 事案の概要:上告人は、自創法…
事件番号: 昭和25(オ)119 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
買収農地は、事実上特定されているのみでなく、買収令書で特定されていることを要する。
事件番号: 昭和25(オ)220 / 裁判年月日: 昭和27年1月25日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法附則第二項によつて買収計画が定められ、その後右附則第二項が削除され、同法第六条の二ないし五が加えられた場合において、裁判所が買収計画の当否を判断するについては、附則第二項によらなければならない。