民訴第二九四条が証人尋問につき一種の交互尋問制をとつているからといつて、そのためいわゆる伝聞証言の証拠能力が当然制限されると解すべきではなく、右証言の採否は、裁判官の自由な心証による判断に委されているものと解すべきである。
伝聞証言の証拠能力
民訴法294条,民訴法185条
判旨
民事訴訟法においては、伝聞証言その他の伝聞証拠の証拠能力に制限はなく、その採否や証明力の判断は裁判官の自由な心証に委ねられる。
問題の所在(論点)
民事訴訟において、伝聞証言その他の伝聞証拠に証拠能力が認められるか。また、親族関係にある者の証言よりも第三者の証言を常に優先すべきという経験則が存在するか。
規範
現行民事訴訟法は自由心証主義(民訴法247条)を採用しており、伝聞証拠の証拠能力を制限する規定を設けていない。私人間の紛争解決を目的とする民事訴訟においては、伝聞証拠の採否は裁判官の自由な心証による判断に委ねるべきという立法政策に基づいている。したがって、交互尋問制が採用されているからといって、反対尋問を経ていない伝聞証拠の証拠能力が当然に否定されるものではない。
重要事実
上告人は、原審が証人DおよびEの証言を排斥する一方で、被上告人の実母Fや伯父Gの証言を採用して事実認定を行ったことを不服として上告した。特に、証人Gの証言は伝聞によるものであり、反対尋問権の行使により信憑性が吟味されていないため、証拠能力が否定されるべきであると主張した。また、当事者と親族関係にある者の証言を優先して採用した点も経験則に反すると主張した。
あてはめ
まず、証言の信用性について、当事者と密接な関係がない者の証言が常に信用できるという条理や経験則は存在しない。いずれを信用するかは事実審の自由な心証に属する。次に、伝聞証拠について、交互尋問制は反対尋問による信憑性吟味を目的とするが、伝聞証拠を排除するかは立法政策の問題である。民事訴訟法は伝聞証拠の排除規定を置いておらず、その証明力の判断を専ら裁判官の自由な心証に委ねている。本件において、原審が伝聞証言を事実認定の資料としたことに採証法則違反はない。
結論
民事訴訟において伝聞証拠の証拠能力は否定されず、裁判所が自由な心証に基づき伝聞証言を証拠として採用することは適法である。上告棄却。
実務上の射程
民事訴訟における伝聞証拠の許容性を端的に示すリーディングケースである。答案上は、伝聞排除法則(刑訴法320条1項)が民訴法には存在しないことを指摘し、自由心証主義の帰結として伝聞証拠にも証拠能力が認められることを簡潔に述べる際に用いる。証拠能力と証明力の区別に注意し、本判例はあくまで証拠能力を肯定した上で、その評価(証明力)を裁判所の裁量としている点を強調する。
事件番号: 昭和27(オ)101 / 裁判年月日: 昭和29年5月4日 / 結論: 棄却
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伝聞証言の証拠能力は必ずしも当然に制限されるものではなく、裁判官の自由な心証による判断に委されていると解すべきである。